美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H270

 可愛い女の子達が私に群がってくる。最高だね。一番最初に抱きついてきた子なんてかなり人種としてレベルが高い。珍しい髪の色してるし……いや、この子のことは知ってるけどね。そもそもが彼女を推薦したのは私だし。
 見つけたのは私ではないが、その可愛さでアイドルやれるって思ったもん。問題はこの子は笑顔とか浮かべないってことだよね。
 さっきの「好き」って言葉もこの子にとってはとても大きな変化だ。なにせ色々な家庭の事情とか周囲のせいでこの子は感情を殺した子だからだ。

 まあ別に珍しいわけじゃない。昔の人種の国は豊かなのなんて本当に一部の権力者だけだった。だから立場的に弱い子供はたくさん悲惨な目に遭ってた。彼女もその中の一人ってだけだ。
 それにその特異な見た目で色々と迫害されてたみたいだけどね。でもその特異な見た目がアイドルでは武器になる。獣人の子がその耳と尻尾で男性を虜にできるように、この子はその特殊な見た目で優位に立てるだろう。実際可愛さだけで、戦えるレベル。だからダンスとか歌とか実際どうでもよかったんだよね。なにせ可愛ければどうにでもなると思ってるし。どれだけその子の可愛さを引き出せるか……がプロデューサーの腕の見せ所じゃん。

 まあもちろん私ほどではない。私ならどんな相手だろうと魅了できる自信があるわけだけど、流石にただの人種の女の子にはそれだけのポテンシャルはないしね。
 でも、それをどうにかするのもプロデューサーの役目なのだ。

「みんな、可愛いね」

 この子達は知らないだろうが、変わった理により、この子達もその命は保証されてる。でもそれはマナが彼女達を殺さないってだけで、傷つかないってわけではない。
 アイドルの命は何か? 私はそれをいつも自問自答視してる。そしてそれはやっぱり笑顔かなって思う。でもそれは思いっきり輝く笑顔ってだけじゃないよ。この子のように感情表現が乏しい子もいるしね。でもこういう子の薄いけど、その奥に秘めたような笑顔もいいと思うんだ。

「皆の晴れ舞台はちゃんと用意するから任せといて。それこそ、本当に人種の晴れ舞台。頂点に立った時のステージ。その準備をみんなしててね」

 私はそう言ってウインクをした。すると流石に限界だったのか、先に気を失った子達と同じように残りの子達も気を失ってしまった。

「あらら、やっぱり私の美しさって罪だね」
「この子達にまだまだプロ意識が足りないってことでしょう。任せてくださいな。ちゃんと仕上げて見せます」
「うん、アイドルは心の支えだからね。頼りにしてるよ!」

 そう言って私はアイドルスクールを後にした。

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く