美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H251

 会議は終わった。皆が部屋を後に……はしない。誰もがラーゼの周りに集まってる。これからの戦いは決して楽なものにはならないだろう。だからこそ、とても重要なことをそれぞれに話し合ってるんだろう……

「ラーゼ様、今夜などはいかがですか?」
「これから、日々戦場となりて、こういう事を考えることができなくなってしまいます。それでしたら、今夜思いっきり――」
「うむうむ、英気を養うのも大切だと思うのですよ。ラーゼ様の寵愛を受けられれば、我等は一騎当千……いや、一機当万の力を発揮して見せましょう」
「いやいやそれなら俺は一騎百万はいけるぜ!」

 うん……皆さん、戦場に行く前に、どうにかこうにか、ラーゼを抱きたいようだ。確かに最後のこの星の頂点を決める戦いが本格的に始まってしまったら、こんなことを言ってる余裕はきっとない。それは確かだと思う。

 戦場に行く前には生殖本能が活性化するとは誰かが言ってた気がするが……

(生殖本能ではなく、ただの性欲なんだよな)

 なにせ種族が違ってもその行為をやることはできても、種を残すことはできないからだ。だからこそ彼らがやってる行為はただ純粋に自分の欲望を満たしたいがだけ……

「はあ」

 思わずため息が漏れる。別に彼らを否定してるわけじゃない。実際、死ぬかもしれないわけだし、その前に思い人と体を重ねておきたいと思うのは普通のことだ。
 自分だってきっとこの後……そう思って、手をつないでるキララをみる。すると自分とキララの視線がぶつかった。するとキララは顔を赤くして、目をそらす。そして反らした視線はチラチラとラーゼとその周りに集まってる奴らに向いている。
 つまりはそういう事だろう。自分たちはすでに結婚して一年くらいは経ってる。子供もすでにいるし、そんな恥ずかしいなんてことはない……はず。だがいざ口に出そうとすると……な。
 いや、けどキララはきっと待ってる。それを女性に言わせるのもどうかと思うしな。キララも自分も戦場に立つことなる。キララは回復要因だから、前線には立たないだろうが、俺はさっきの指令通り、最前線で、しかもオウラムのトップとぶつかることが決まってる。
 そしてそいつはラーゼさえも恐れる『王の剣』を持ってる。

 自分が無事に帰れる確率はかなり低いだろう。確かに自分は人種の中では英雄だが、ここまで生き残ってこれたのはアンティカと運のおかげだ。次も生き残れる保証などどこにもない。だから……

「キララ、あーえーと、次は男の子と女の子、どっちが……いい?」

 頬を書きながら、そんな風に聞くのが自分には精いっぱいだった。

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