美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H220

「むむむ……」

 私は不安を現わにしてた。ラジエル……はどうでもいいが、ウサギっ娘が来ないし、他にもかわいい子がいたらいいんだけど、まあそうそうウサギっ娘クラスのがいるわけない。確かに種族が上位に行くほどに容姿もよくなっていくのがこの世界だ。
 でも、だからって何をもって良い容姿かというと……それは種族によって変わる。なにせ普通に二足歩行して腕は二本で頭があって……という種族は少なくないけど、私の許容範囲に入る種族ってそこまで多くない。
 別に腕が四本とかあってもいいし、下半身がタコとかでもいいけど、せめて顔はまともであってほしいよね。まあまだ顔が獣系なら許す。蛇やグルダフの奴は許してるし。
 でもそれは可愛いものなのだ。この世界にはもっとおかしな奴らはたくさんいるのだ。

 だから私の琴線に触れるような存在は今のところ見当たらない。全く嘆かわしい。私は何故かどんな種族にも魅力的に見えるらしいけど……

(進みたいんだけど……)

 流石に街の中央ともなると、どこに逃げることもできない人たちが大勢集まってるせいで、団子状態なのだ。私が一歩進めば一歩引くが、それも限界がある。道が開ける程はない。なにせ今この場にオウラムに参加してる種族のほとんどが集まってると考えると、こういう状態になるのは仕方ない。それに私に吹っ飛ばされてたやつらも、前方へと回って盾になるようにしてる。

「はあー」

 めんどくなってきたなぁ……それに胸も苦しい。いつまでも体内に巨大なマナをため込んでおくことは出来ない。このアンティケイドの体では。
 いつか爆発する。ん? そうだ!

「ねえ。私のこの体ってもうすぐ限界なのよね。そうなったらボカンって感じで弾けちゃうわけ。そうなるとあんたたちどうなると思う?」
「貴様……ここで自爆をする気か!!」

 なんかこの中ではそこそこ偉いのかな? 下半身が馬みたいで、上半身にカニがついたような奴が喋る。もうどういう種だよ。どういう進化を辿ったらそうなるの? 
 興味はないけどね。

「別にそうじゃないよ。だって私の目的はあんたたち……というかここにいるような雑魚じゃないし。どうせ痛手を負わせるなら、オウラムよりもアクトパラスやゼンマイにしたいわけ? わかる?」

 私は腰に手をあてて、裸のままそういうよ。まあどうしようもないからだけど。私の言葉を聞いて、ざわざわとオウラムの奴らがしてる。どうするか……それが本当なのか、きっと議論してるんだろう。でも……そんなの待ってられないよ。私は一歩を踏み出す。すでに山は目の前で、大きくマグマが囲んでるその手前までは来てる。そして彼らの背後には大きな建物がある。あれがこっちとあっちをつないでるのは知ってる。すでに彼らにはあとはない。まあ沢山いるせいでそれなりにばまだ遠いけど……でもあと少しともいえるのだ。

「お前を行かせたら、この地はどうなる!?」
「ん? そんなの知らないよ。まあ源泉であるあの山が守られればどうにもならないんじゃない? 私の爆発で山はなくなりそうだけど」
「ならやはり!」

 そう言って馬とカニが合体したような奴はその鋏の中にある手でつかんだ武器を構える。その鋏はなんじゃ? といいたい。

「ここでばっくはつしようかな~?」
「くっ」

 別に私はどこでもいい。なるべくならアクトパラスとゼンマイに痛手を負わせたいが、まあここを襲ってる間にこっちの準備も整うだろうし、私のはあくまで次いでなのだ。
 だから別に……

「今ここで、あんたたち全員世界樹に返して上げていいんだよ?」

 私はそう言ってわずかにマナを漏らして上げる。すると一斉にオウラムの奴らはひれ伏した。首を垂れて、地面に這いつくばる。私はそいつらを踏んづけて建物へとたどり着いた。

「ごくろう」

 屈辱にまみれたことだろう。でも私は愉悦だよ。

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