美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H177

 瞳を何回かパチパチとする。するとそのたびに私の視界は変わっていた。それは近くのアンティケイドの視界に私が介入してるからだ。彼らの視界を私は共有して見てる。そうやって丁度いい位置にいる奴は居ないかと……

(あっ、なんかヤバいモンスターに追われてるじゃん。見なかった事にしよう)

 そんなアンティケイドもいたが、まああのアンティケイドには頑張ってもらうとして、私は丁度見晴らし良い位置にいた一体のアンティケイドの視界を確保できた。

(へぇー、かなり吹き飛ばしてるじゃん)

 どうやらアルス・パレスの一撃で、少しずつオウラムから遠ざけようとしてる感じだね。まああれだけの物量というか、質量? 浮いてるから実際どのくらいというか重さがあるのかとかよくわかんないが、かなり巨大なのはたしかだ。そんな黒い物体を動かすとなれば、やはりアルス・パレス級の攻撃が必要だろう。
 まあけど……

(ダメージ見られないね)

 残念なことにあの黒い物体に変化はない。なんかぶよぶよしてるから、すり抜けた? でも実際、あいつ自身はオウラムがあるだろう山の方から遠ざかってはいる。だからだけど、多分あいつの中央部分はぶよふよしてないんじゃないか? ありえそうな気がする。いくらでも外殻というか外の方は再生できても、その中心部分にはそれこそ、コアらしきものがあって、それは変化はできない。生半な攻撃ではそこにたどり着ける筈もないんだろうけど……アルス・パレスの攻撃はきっとそのコアに届くものだったんだろう。だから全力で防御に回った。

(中央部分に攻撃をとどかせれば良いのなら……狙ってみてもいいかもね)

 私は一旦、視界のジャックをやめてダンプの方に戻った。

「ん? 何やってるのよ?」
「すみませんでした」

 早い! 謝るのがこいつ早いよ。バイセンってこんなキャラだったのか。いや、言い訳なんてしないのは硬派なこいつらしいといえばそうだけど……今、私の意識が視界が移ってる間に、なんかバイセン、お触りしてた?

 ほっぺたを触られてた感覚は残ってる。他は良くわからないけど……てか土下座って……

「なに? そんなに私魅力的だった? 知ってるけど」
「いえ、元のラーゼ様に少しでも近づけようと……ですか、私では恐れ多いことでした」

 まって、なにそれ? 何しようとしたわけ? なんか怖いんですけど。とりあえずなんか聞くの怖いからこれ以上の追求はしないことにした。別になかされても、これは私の体ではない。
 まあいきなり卑猥な物ぶっかけられたりしてたら、流石に処罰くらいするけどね。頬を触って柔らかさを堪能してたくらいなら多めに見ようじゃない。

「それで、敵はどうでしたか?」
「そのままの態勢で聞くんだ……まあいいけど。アクトパラスは無事だよ。でも一つの仮説は建てられた。ちょっと戻るからこの体お願い。今度は変な事しないでよ」
「かしこまりました。この生命に変えて」


 うーんバイセンの奴は本当にいちいち大げさだ。とりあえず私は一回元の体に戻ることにした。

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