美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H155

「うおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 再び山の壁にぶつかるアルス・パレス。なんとか潰される……なんてことにはならなかった。直前でひもを短くじゃなく、伸ばしたのが効いたな。一生懸命アルス・パレスへと至ろうとしてたが、間に合わないと判断した時点で、逆に紐を伸ばしてたから、壁とアルス・パレスに挟まる危機を乗り切ることができた。とりあえず山の壁にのめり込んで、動きが鈍くなってる今がチャンスだ。このタイミングで一気に紐を巻取り、アルス・パレス侵入を目指す。
 もう一度さっきのようなことが起きたら、今度は無事でいられる保証なんてないからな。

「はあはあ……ぐああああ!」

 なんとか……俺たちはアルス・パレスへとたどり着いた。そこは俺が知ってるエデンとは全然風景が違う。たくさんの機械が複雑に入り組んでる、そんな感じで緑なんてものは一切ない。まあ緑なんてあるわけないが。なにせこんなマグマの近くでどんな植物が生きられるんだって感じだし……でもドカドカと壁にぶち当たってる割にはアルス・パレスにはそんな被害はなさそうだった。どうふやら山の側面よりもアルス・パレス自体の方が頑丈らしい。それにこんな状況なのに、物資を普通に運んでる。

 そこら中にベルトコンベアが動いてて、それが止まってる様子はない。いや、さっきの衝撃とかで運んでたものが落ちてたりもするようだけど……なんかロボット? の良うな、平べったいものが浮かびながら、散乱した物資を運んでるみたいだ。流石にあれに見つかるのはまずそう……

『侵入者発見』

 赤い光が俺ともう一人を照らし出す。しまった、速攻で見つかってしまった。同じ言葉を繰り返すその機械は、近くで見ると案外でかい。まあ大きな物資も運ぶのなら、それなりの大きさが必要なんだろう。というか……そんなことを思ってる場合じゃない。

「逃げるぞ! ――つっ!?」

 ガクンと膝が地面についた。カクカクとしてて、上手く力が入らない。やばいな……ここまでの疲労が体の限界ってやつを訴えてるみたいだ。

『侵入者発見・侵入者発見・侵入者発見』

 そんな声はどんどんと大きくなる。なにせ同じような機械が四体くらい集まってきてた。そしてそいつらが、俺達に向かって何やら飛ばしてきた。それはネバネバした液体だ。どうやらそれは簡単に行動を縛るもののよう。そして動きを拘束された俺達は、箱に詰つめられた。そして真っ暗な中、どこかへと釣れられてるのがわかる。

(もしかして、このままマグマの中へっとことはないよな?)

 むしろこの箱で熱気が抑えられた感じだからそれはないと思いたいが……でも侵入者の末路としてはふさわしい。なにせ、死体を処理する必要もないしな。マグマに投げ込むとか、なんと効率的か……でもどうやら、それは違ったらしい。何やら途中からどこかに捨てられたのか、めっちゃ箱の中でグワングワンと全方位に回転する。これってある意味このネバネバした液体がなかったら、箱に体をぶつけまくって死んでたのではないだろうか? それほど雑な扱いをうけた。そしてどこかに落ちて、そこで箱が空いた。動かない体で、俺は視線だけを動かす。するとそこには一つのアンティカがあった。
 白と黒を丁度半々にしたようなカラーリングのアンティカだった。

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