美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H153

 たった二人になってしまった俺達だが、それからは順調だった。なにせ追っ手が一人たりとて来なかったからだ。おかしい……だが、それでも止まるなんて事は無理だった。そして当時に罠の可能性も考えた。だがそれも結局は却下した。

 なにせわざわざこの山の主まで出てきたんだぞ? 本当ならさっきの場所で俺達の進行を完全に防ぐつもりだったんじゃないだろうか? なにせ明らかに俺達とあの女には隔絶した差があった。きっと何人居ても、俺達は彼女に勝つことは不可能だっただろう。それだけの差だ。上位種という別格の存在は今思い出しただけで、火傷が更に痛む気さえする。一応回復系のアイテムを使って見た。普通の火傷なら、傷跡なんて残さずに直ぐに回復させる位には強力な奴だ。勿論、致命傷まで治せるなんて万能な代物じゃない。そんな物があれば、死ななくて済んだ奴らだっている。あくまで軽傷の部類を瞬時に直せる程度のアイテム。

 でもこれを使ってもほぼ効果は無かった。勿論、完璧に治るなんて期待はして無かった。だが、痛みが引く――くらいは効果はあると期待してた。でも全然だ。多分だが……これをつけたのは上位種あの女だ。つまりは、そのマナの影響が色濃く出てる。それがアイテムの作用を遮ってるんじゃないだろうか? そんな知識が角にあった気がする。まあだが、痛みなんて我慢するだけだ。なにせ誰も追っ手はない。それでも一応急ぐのは、何か胸騒ぎがするからだ。

 胸の奥のところが何やら、やべえ――と訴えてきてる。それに遠くでなにか戦闘音? の様な物も聞こえてる。それに振動も……最初よりは小さいが、確実に響いてるんだ。何かが起きてるのは確かだ。その何か……を確かめる術はない。無線程度じゃ、この山に満ちた濃いマナが妨害して使い物にならない。外には残ってる舞台の奴らもいるはずだが……連絡が取れないと何も確かめる事は出来ない。

 そうこうしてる内に、火口と思わしき場所にでた。真っ赤なマグマが大量に煮えたぎる場所。それにかなり広い。さっき戦った場所なんて、ただの子供サイズだったといわんばかりの広さ。勿論熱気も凄い。

「響いてきやがる……」

 熱気が俺の火傷を燻る感覚だ。これから火を見る度に自分の死を実感しそうで怖い。そしてこの火口の中心にアルス・パレスはあった。ちゃんと通路が一つ、造られてる。搬入と搬出をする為の動く歩道の通路だ。そこから一気にアルス・パレスへと侵入できるだろう。そんな事を思ってるとアルス・パレスが大きく揺れ出した。

「動き出そうとしてる? ボス!」
「わかってる、急ぐぞ!!」

 まさかアルス・パレス事態が動く? そんなこと……まあアルス・パレスはエデンの一部だから浮遊能力があってもおかしくはない。しかもかなり強引に動き出そうしてる? 動く歩道がめっちゃガタガタ言ってるぞ。本当はもっとちゃんとしたやり方があるだろうに……と思える。俺達は走る。どんどん角度が付いていくが、それはまだ良い方。角度が付きすぎると、通路自体が崩壊――したああああああ!!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品