美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H111

「まだやるか?」
「ぐっ……がっ……」

 なんとかヌウナ種は動こうとしてる。でも……その思いとは裏腹に体は全然動こうとしない。そんな自分の体が信じられないのか、段々とその体から熱が引いていく。ヌウナ種の真っ赤になってた体が徐々に青く戻っていく。

(わかってくれたかな?)

 そう思った。だがその時、上から落ちてきた腕がヌウナ種の頭に直撃した。そして激しく地面に倒れる。おいおい、何今の? 誰が? 他のヌウナ種か? そう思ったがどうやら近くには居ないようだ。なら今のをやったのはこいつか? 自分の体が上手く動かないから、さっき出してた腕の一本を操ったのか? でも俺ではなく、自分を攻撃するとは……とち狂ったか?

「俺達は……もう負ける事は出来ない……だ。死んでいった同胞達の為にも……」

 そう言って倒れたヌウナ種が起き上がってくる。立派な事で……そう立派な心がけだと思う。でもそれとここの秩序を乱すことはなんの関係もない。その誇りや思いは胸に抱いてろって思う。負けるにも何も、これは別に命を取り合う様な事でもないしな。
 まあ向こうは完全にこっちを殺す気だが……

「お前達の同胞も、俺を殺した所で喜びしないと思うぞ? 見誤るなよ」
「五月蠅い! 獣人風情が!!」

 その獣人風情にボッコボコにやられてたのはどこのどいつなのだろうか? うーんここまでやってダメなら、はっきり言ってもう追い出した方がいい気がする。確かにヌウナ種は強い種だと思うし、このまま追い出すのはどうか思ってた。なにせこれから更に戦いは激しくなっていく事は容易に想像が付くからだ。

 俺達は先の戦いで色々と消耗した。エデンの一部は手に入れたが、得た物なら人種の方が多い。それにあいつらは今、魔族と手を組んでる。そして魔王の存在。更には世界樹が向こうにはある。俺達オウラムはとても危うい状況だ。この世界で一番危ない勢力と言っていい。だからこそ、力は大切だ。だが……これまでのやり方ではもう生き残れない。
 それを理解して貰わないといけない。それぞれの種でどうにかこうにかやれてた時代はとうに終わり……俺達はこの世界に淘汰された存在なんだ。今俺達が生きてられてるのは世界の慈悲みたいなものだ。でも、まだ終わりたくない……そんな意思はちゃんとある。それをわかって欲しいんだが……

「俺達は獣人やヌウナ……その他の種でもなんにも変わらないだろう?」
「ふざけるな! 我らは逃げてなどいない! 逃げてなどな!」
「それでもお前達は負けた側だ。そして俺達もだ。でもまだ完全に負けた訳じゃない。だからこうやって皆の力を種の垣根を越えた力を欲してる。お前達もだからこそ、ここに居るんじゃないのか?」
「なら、俺達が率いてやる!! それが正しい事だ!!」

 自分に衝撃を加えて俺の縛りを抜け出し奴は再び迫る。やっぱりこいつにはちゃんと刻む必要がある。さっきは心に刻んだ。だから今度はその体に刻もう。どっちが上か。

 俺は腕を突き出す。その拳がヌウナ種の体に突き刺さる。その瞬間、拳から放たれた力がヌウナ種を咥えた。力は獅子の頭の形をしてる。ヌウナ種に逃れる術はない。その体を砕き引き裂き、そして遠くまで飛んでいく。

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