美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H109

 ヌウナ種の一人が俺へと突っ込んでくる。だがここで戦うつもりはない。俺は素早く突っ込んできた奴の一撃を交わして伸びきった腕を掴む。そして勢いをそのままにぐるぐる回って空にあげた。

「ここならいいだろう」
「我が空中程度で何も出来ないとおもったか!?」

 体全体を真っ赤にしたヌウナ種はその体からメキメキと翼……と言うにはあまりにも無骨な物を出してきた。鳥とかの翼みたいな柔軟性の欠片もない物だ。ただ斜めに真っ直ぐに伸びる板? みたいなのが四本、ヌウナ種の背中から生える。こいつらは自身の体を作り替える事が出来る種だ。まあ下手すると、自身の存在すらわからなくなる――というデメリットがあるらしいが、流石にそこまでの力を使う気はないだろう。
 ここでそこまで為てきたら……流石に生かしておく……なんて出来ないしな。

 背中から生えた翼に溝が入り、そこから炎が吹き出る。それを推進力にしてか、ヌウナ種は俺へと迫る。空中で俺はどうしてるかというと、体の制御と素早く空中を蹴って空を駆ける……という芸当を成してる。昔は出来なかった。だが、今の俺なら、このくらい造作もない。

「トップに立つ程度の力は有してる様だな獣人!!」

 ちょこまかと動く俺に、ヌウナ種は大きく空を旋回してる。小回りはあまり効かないらしい。俺はその場で向きを変える事だってできるから、大きく旋回してるヌウナ種を追うのは簡単だ。それに決まって奴は直線でしか仕掛けてこないし。方向転回自由自在な俺からすれば、防ぐ事なんて簡単。

 まあまともに受けたら、踏ん張れないここでは直ぐに吹き飛ばされるから上手く受け流してる。でもヌウナ種の拳は受け流す度に勢いが増してる。あまりやってると、流石にそれを出来なくなりそうだ。それになんか腕を置いてるし。

 表現がおかしいかもしれないが、ヌウナ種は体を変化させる事が出来る種だから色々と出来るらしい。あいつは今、飛び回りながら、腕を複製して、それを切り離して空に放ってる。せっかく今日は綺麗な晴天なのに、軽くホラー入ってる。まあだが、これだけぶちまければ、何をしたいのか、想像はつく。

「ちょこまかともう出来ないぞ」

 俺の四方八方を腕で囲んでそういうヌウナ種。まずは本体が一気にせまる。そう来るんだ。この周囲の腕で攻撃するのかと思ったが、真っ先に本人が突っ込んでくるって……性分か? とりあえずそれなら後は簡単だ。俺は今度はしっかりと受け止める。でも当然踏ん張りがないから後方に押される。

「諦めたか!!」
「そうじゃない」

 後方にも当然腕はある。そもそもがヌウナ種の突っ込みに合わせて腕も動いてた。後方に迫る腕。このままではあの腕が体に突き刺さるだろう。だがそんな事はさせない。俺は無理矢理ヌウナ種と体を入れ替えた。

「なっ!? ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 後方だけじゃなく、それが終わったら上から来てる腕に晒して、右……左……更に下……ヌウナ種は自身の腕に貫かれてボロボロになった。動かなくなったヌウナ種から俺は手を離す。地面に落ちていく彼を俺は、冷たい目で見てた。

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