美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H92

 私の直上にきた黒いスライムとなった二つの種。表面に幾重もの陣が重なって見える。

「ヤバっ!?」

 そう思った瞬間、アンティケイドが何体か空に跳んでいく。その程度でどうにか出来るとか思えないから、私は自身でも障壁を展開するけどね。そして案の定、周囲が訳わからなくなった。一瞬、めっちゃでっかい音がしたと思ったけど、そんなのは正に一瞬だった。一瞬で音はどこかへと行き、上下の感覚さえ消えた。足を確かに着いてた筈なのに、星がどこかへと行ってしまったかのような……そんな感覚。

 それでも体が痛いとかはない。まあアンティケイドに宿ってるたげだし、肉体へのダメージは鈍いからね。でも多分そう言う事じゃないと思う。私だって今まで何もしてこなかった訳じゃない。私は自身を守る事、その一点については手を抜いた事は無い。

 なにせ私は至宝の様な美少女だ。私の損失は世界の損失なんだよ? そして私は我が身が一番可愛い。私は一番自分を守る術を強化してきたのだ。まあその最終形ともアンティケイドは言えるかも知れ無い。なにせ私は安全圏にいるんだからね。

 私はグワングワンとする今の状況をちょっとしたアトラクションみたいに感じてた。相手は現状この星で最強種である二種だが、それでも心に余裕はある。

「そこだ!!」

 私は指を銃の形にして、光りを放つ。一筋の光だ。それが全てを平穏にしていく。さっきまで訳がわからなく、体がどこに飛んで行ってるのかさえ理解できなかったのに、私の一筋の反撃でその身はこのせ回に戻ってきた。周囲の地形は変形してるが、それでも私が感じてた様な事になるのかはちょっと疑問だね。

「幻覚でも見せてた?」

 攻撃は外面だけじゃなく、内面にまで及んでたのかも知れない。でも私の放った攻撃は、そういう物を吹き飛ばした。案外ちょろい? 私は確かに地面を踏みしめて襲い来る触手を避ける。

「アンティケイド達は?」

 私は頭の中で彼等を確認する。案外無事だね。流石に上に飛んだ数体は消滅してるみたいだが……あとは割と生き残ってる。まあアンティケイドはしぶとさも売り出しね。めっちゃ破損しても、マナを吸収して自己修復も出来る。動けない奴も何体か居るが、放っといてもその内修復して動きだすだろう。

「この!」

 私は襲ってくる触手を撃って撃墜しつつ、アンティケイド達を回収してまわる。いや、アンティケイド達はそこまで戦闘が得意じゃない。そもそもが情報を集める為の存在だ。色々とやれる事はあるが、流石にあれには……ね。触手なんて単純な攻撃だが、そのスピードも堅さも数もヤバい。それにアレはどこからでも陣を発動して魔法を使えるみたいだ。

 単純に厄介。しかも向こうの方がめっちゃデカいんだよ? このままずっと直上に居られたら流石にオウラムまで逃げられない。なので私はアンティケイドを集めるのだ。下手にこわされるよりも良い。私が有意義に使ってあげるんだからね。

 私はダメージを受けてるアンティケイド達をその身に取り込んでいく。なにせこの体もアンティケイドだ。だからこういうことも出来る。

(さて、どういう風に作るかな)

 私はそんな事を考えてた。

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