美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H83

「うっ……生きてる?」

 あの魔物の攻撃を食らったから、一撃でやられるかと思ったが、一瞬視界が暗転しただけで、どうやら私が宿ったアンティケイドの体は無事らしい。けどマナがごっそりと減ったのはわかる。

「うわぁ……」

 右半身がないじゃん。別に痛みとかはないが、なかなかに衝撃的。いや、血とかは出てないけどね。なくなった部分は白くなってるだけだけど……それでもね。いつの間にかあの化け物から距離が離れてるみたいだね。吹き飛ばされた? 消滅してたからそんな勢いみたいなものは無いのかと思ってたけど……消滅しなかったから勢いが現れたのだろうか? 

 でもこのままだと次の一撃でやられる。どうしたら……

『ラーゼ様、近くのアンティケイドを向かわせます』

 本体の方にそんな声が響く。まあそれしかないよね。問題は間に合うのか……先にあの化け物に見つかったら終わるよ。それともあいつも消滅したと、勘違いしてくれてたらいいけど……楽観的なのはダメだよね。そんな事を想ってると、二体くらいのアンティケイドがやってきた。早い、流石だね。私の傷口に触れるアンティケイドの一体。私はそいつをマナで包み込んでこねくり回す。
 人型をしてたアンティケイドは粘土のように形を保てなくなってただの肉塊になった。それが私の亡くなった部分へと補われる。アンティケイドはこういうことが出来て便利だよね。実験的に出来る事はわかってたけど、まさか行き成りの実践で使う事になるとは。

 あとは本体でも出来れば良いんだけどね。アンティケイドの体同士なら、出来るだろうって事だったけど、別の肉体では拒否反応とか出るかもしれない。でも一応アンティケイドも純に近いマナで作ってある。だから大丈夫とは思うけど……わざわざ自分を傷つけてまでやろうとは思わないんだよね。

「よし、復活!」

 私は元通りになった体の感触を確かめる。ちなみにライダースーツとかもちゃんと元に戻した。全ての物は元をたどればマナなのだ。マナに再現出来ない物はない。勿論、ただのエネルギーであるマナだけでは厳しい。そもそもマナに質量とかそういうのないし。でもアンティケイド有を別の有に作り替えてるみたいな物だから、まだ簡単。

『どうやらあの魔物は他のアンティケイドを襲ってるようですじゃ』
「状況は?」
『逃げに徹してるので今はそれほどの被害はありませぬ』
「てか何なのよアレは? エデンのデータベースで調べてる?」
『やっておりますじゃ』

 あんなヤバい奴が何のデータも無いなんて考えられない。だから何か情報を求める。自分でもちょっと分析するけどね。

「あいつの力……食らった時のログでも手繰り寄せれば攻撃のヒントになるかも」

 自分がやられた事なんか秒で忘れたい私だけど、今回は本体じゃないからね。歓談名心で許してやろうじゃない。それよりもあいつのあの謎を解明する方が重要だ。なにせマナを消滅させるあの特性……興味深い。

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