美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H68

 長い廊下を歩く。横から差し込む日差しが長い影を作ってる。そんな時間帯だ。後ろには秘書が二人……いや、だがこれは秘書と言うよりも、監視というか……なんというか。二人は薄い板の様な物を抱えて私に随伴している。

 二人ともやけに若く、美人な秘書だ。かっちりとした厳しめな見た目の鋭い眼鏡の女性と、ゆるふわカーブな男受けが良い感じの柔らかい雰囲気の女性だ。

「副総統、これからの予定ですが――」
「ええ~副総統~、もうお仕事辞めましょうよ。良い事しましょう!」

 対局な二人がそれぞれそんな事をいってくる。この二人は常に私の側にいる。どう考えても、彼女達が望んだとは思えない。確かに私はエデンの副総統の位置にいる。それは神者として君臨するラーゼ様を頂点として三番目のくらいの位置だ。二番目にはアンサンブルバルン様が大総統と立場でいる。確かに地位だけなら高いが、こんなハゲたおっさんに喜んで付いてくる奴らなんていないだろう。

 アンサンブルバルン様にもそのほかの幹部連中達にも慕ってくる人々が沢山いるわけだが、私はそういう者達がいなかった。だからだろう。ラーゼ様が気を利かせてこの二人を寄こしてくださった。まあだからこそ、下手に扱う事もできない。
 だが、二人とも確かに優秀ではある。キリッとした女性『キリコ』さんは言わずもがな実はゆるふわカーブの『フリル』さんも優秀なんだ。さっきの発言では信じられないかも知れないが、フリルさんはきっと私の体調まで気遣ってる。
 別にキリコさんがこっちの体調をおもんばかってないわけではない。二人は私のサポートが仕事だから、どうしたら私が快適に、そして順調に仕事をこなせるかを常に考えていてくれる。キリコさんはまだ大丈夫と思い、フリルさんはそろそろ休んだ方がいいと思った……それだけの事だ。

「まだ終業にするには早いです。今日の分の最低限の仕事を捌かないと、翌日に更に副総統が大変に成られます」
「そこは私達も頑張れば良いですよ~。それにしっかり休めば、その分仕事の効率は上がると思うな」
「それは理解できます、私だって副総統に無理をさせる気はありません。ですが最低限、ここまではやって貰わないと、後々の支障に触ります」
「それをカバーするのが私達だよ。私は副総統には疲れなんて感じないでお仕事して欲しいの。それがラーゼ様の望みだし」
「私だってそうです。副総統の体が一番大事ですよ。彼の代わりなんていないのです。ですが、私達では決定できない事もあります」

 二人は私を休ませるどうかでいつも言い合ってる。二人の一番の仕事は私の健康管理だからだろう。実は一度、私は倒れてしまった。だからそれを教訓にラーゼ様は彼女達を寄こした。その心遣いだけで十分。それに二人が来てからは、本当に仕事は滞りなく進むようになった。無理もしてない。体はいたって健康になったといっていい。

「二人とも、そのくらいにしなさい。私は大丈夫だからキリコ君の予定通りに、だが早めに終わらせよう」
「「はい!!」」

 そして二人は私の言葉には従順だ。でもそんな美人二人を侍らせてるから、なんかよからぬ噂があるとかないとか……

「あの、今夜はどっちが?」
「いつでも準備はできてます」

 おかしい、噂だけの筈なんだが……こんな事を誰かに聞かれるから噂となって出回るんだ。はっきり言っておくが、私は彼女達には一切手を出してない。私はただ一人、ラーゼ様一筋だからだ。

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