美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H67

「いや、なんだ今の!?」
『なにと言われても……そういう物というかですね』
「待ってください。今のはなかなか理にかなってるかも知れません。とりあえずここの摘める花を摘めるだけダンプの中に摘んでおきましょう」
「どういう事なんだ?」

 サポの奴が遊び心を出した……とか思ってたんだが……違うのか? リリアまで理にかなってると言うのなら、サポの今の花占いみたいな事はちゃんとした意味があったという事か? リリアは足下の花をプチッと摘み取る。さっきはサポの奴がその体に取り込んでたから、食ってるのか? とか思ったが、美少女がやると……ね。途端に絵になるんだからちょっと見蕩れてしまう。

 そんな事を想ってると、何やら花の周りが光ってる様な……

「わかり安い様にマナを可視化してみました。どうやらこの花にはパウジーフラワーのマナが残ってるみたいですね」
「マナは引き合う性質でもあるのか?」
「無いですけど、ちょっと後押しをしてあげれば良いだけです。確かに占いと言ってもいいくらいの制度かも知れないですけど……ある程度は指針になります。とりあえずもっと高く飛ばしてみましょう」

 そう言ってリリアが持ってた花を空高くに放つ。あんな風に無造作に投げて花びらとか飛び散らずによく昇っていく物だ。多分リリアが強化してるんじゃないだろうか? でもそれにしても……

「高く上げすぎじゃね?」
「え? 見えないですか?」
「見えねーよ!」

 魔族のリリアには見えるのかも知れないが、高く上がりすぎた花は俺達の視力では見えない。道具を使えば見えるだろうけど……それでもこの大空から花びらを見つけて追跡するのは大変だ。てか……

「ここはまだ良いが、森に入っていくと、木々が邪魔で空なんて見えないんじゃないか?」
「……そう言う事は早く言ってくださいよ」

 リリアも気付いてなかったらしい。ここが特殊なだけで、この森はかなりデカい木々が立ち並んでる。それも奥に行けば更に顕著になるだろう。なら空に飛ばした花を追いかけるのは難しい。まあやりようがないわけではない。なにせ飛べる魔族が二人いたし、その二人が花を観察して、その進路を通信でこっちに届けて貰えばいいだろう。

「あっ、済みません。そろそろ私達帰らないとなんですよね。一応、偉い立場なので」
「え? マジ?」
「マジですね。一応パウジーフラワーの力は得たので目的は達しましたし。殲滅……するほどの種でもないかなって。十分さっきの戦闘で楽しみました」
「もともと……リリア達の参加は正式な物じゃないし……俺達が何か言えることでも……ない」

 参加してくれた事がイレギュラーなんだ。いつ帰ると言ったとしてもそれに文句を言う筋合いは俺達にはない。

「すみません。でもこれで私達が抜けたから皆さんが全滅……なんて成ったら流石に悪いので、ダンプを強化しておきますよ。ダンプはきっと生命線になるでしょうし」
「そうしてくれると……助かる」

 既にかなり無茶をさせてる。森の奥の方に行くのは良いが、途中でダンプが壊れたら還る事はほぼ望めなくなる。それは困るからな。ここからは想定外なんだ……その想定外に、少しでも耐えられる物が増えるのなら、ありがたい。

 それから俺達は別れてた舞台と合流して、花をダンプの一つに詰めた。そして、リリアがダンプ全台に強化を施してくれて、そしてリリアと魔族の二人はさっていった。途端に何か、森が不気味な物の様に思えてくる。大きな口を開けてバカな獲物を舞ってる魔物の様な……そんな印象を受けた。

 どれだけリリアの存在が大きかったか……それは戦力だけじゃない。精神面的な事でもそうだったみたいだ。だが、くよくよなんてしてられない。不安に潰される訳にもいかない。俺達は……課せられた任務を全うしなくちゃいけない。ここから長い旅が始まった。

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