美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H64

『もしかしたら、パウジーフラワーが森に広がったのは、あれではないですか?』
「あれ?」
『炎の上です』

 サポの言葉に見上げようにも、穴の近くではちょっと無理そうだ。だから俺はさがってみる。すると確かに見えてきた物があった。これだけの炎の柱だ。火の粉なんて物も当然に周囲に舞ってる。だから気付きにくかったのかも知れない。そんな火の粉に混じって、何やら空を飛んでるものがある。

「胞子か?」
「いや、でもボス、あんな炎の近くだぞ。燃え尽きるだろう?」
「普通はな……普通はそうだが、パウジーフラワー共は実は炎に耐性があったのかも知れない」

 俺達はパウジーフラワーという名前、そして植物の姿を見て、炎が有効だと判断した。そして実際、炎で倒せた様にも見えた。それに周囲の花畑を焼き払うにのにも炎が最適解だと思ってる。でも……だ。でももしも……それらは全て、パウジーフラワーによって誘導されてたとしたら? そもそもあいつらは寄生する物はなんでもいい……筈だ。最初俺達が仕掛ける前の姿はそれこそ、色々な素材をつぎはぎしたような姿をしてた。

「もしかしたら、あの頭に出てくる花もダメ~なんて事も……」

 そもそもがこれ見よがしに、花を一輪出してるのって、今にして思えばおかしくないか? 普通、弱点を進んで晒す生物がいるだろうか? 普通はそんな生き物はいない。弱点とは極力みせない物だからだ。なにせ自然界に卑怯なんて言葉はないだろう。野生では生き残るためには相手の弱点を狙うのは当然の行い。弱点を狙うのは卑怯ではなく、弱点を晒している奴が間抜けなのだ。
 でもだからこそ、パウジーフラワーが無闇に弱点を晒してるのが、今更ながらにおかしい気がしてきた。そういう種だと情報を与えられて、俺達は決めつけてたんではないか? 目の前で観た物で情報というのは随時更新していく。そういう柔軟さが俺達には必要な筈だ。

(油断……慢心があったか? いや、有ったな)

 俺はリリアを見てそう思う。なにせリリアは魔王だ。魔王というとびっきりの戦力を得て「これはもう勝ったなガハハ!!」と思ってなかったと言えば嘘になる。確かに森に入ったときはめっちゃ焦ったが、なんやかんやで、あの大襲撃も乗り越えることが出来た。それもこれもリリアのおかげだ。リリアがいれば、大抵なんとかなると思えるし、実際の所なんとかなる。なにせリリアのおかけで俺達はバンセンさんを温存できた。

「サポ、お前は同じようなことが出来るか?」
『マナが豊富なら出来ますね』

 サポは花粉種とかいうやつだったな。ならパウジーフラワーと親戚みたいな物では? まあそんな事を言ったら怒りそうだから言わないが、どうやら、植物系の種でも、炎に耐える術は複数あるみたいだ。マナか……人種にはその一段階さがった魔力とかではないと使えないからな。それを感じるって事は出来ない。

「もしかしたら、パウジーフラワーはリリアの事を感じた時には、既に逃げる算段をしてたのかもしれないな」

 今にして思えば、パウジーフラワーの行動はなかなかに不自然な事が多かった気がする。そこまで反撃してこなかった……とは言わないが、勝利を目指してた様には感じなかった。リリアとは、魔王とは圧倒的な存在だ。そんな存在が襲ってきたら、どうするのか……当然逃げる。それを考えると、パウジーフラワーの行動は至極まっとうなんだ。クソッ、まともな思考しやがって……

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