美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H47

 大きな縦穴がある場所まで来た。俺達が目的にしてる種はこの下にいるらしい。らしいが……どうやって行くのか。いや一応装備はある。ロープとかは持参してる。だがここから直接降りていくのは目立ちすぎる。いや、その為のこの新装備なのかも。確かこのマントには外の景色と溶け合う仕掛けがあったはず。ならバレずにいける……か? 俺達は実際、敵側の情報をあまりもってない。
 たしか頭に花が生えてる種って事くらいしか聞いてはないのだ。パウジーフラワーとか言ったか。そんな奴らを殲滅する理由なんてあるのかと思うが、凶悪な力を持ってるのかもしれないし、ここまで世界の情勢が決まってきてるのにどこにも併合してないのなら、そういう気が無いのか世情に疎いのか。まあずっとこの下にいたのでは何も分からなくても仕方ないかも知れない。人種の国には既に沢山の種がいるんだし、取り込むって選択肢はなかったのだろうか? 

(まあ、俺が考える事でじゃない)

 そもそもそれが上手くいってたら、俺達がここにいるなんて事は無かっただろう。

「ボス、やっぱり他にこの下に行くような場所は近くにはないですぜ」
「そうか」

 もしかしたら下に行く手段が他にもあるかと周囲を探させてたが、それの発見には至らない。何か洞窟のような場所があってこの下に続いてるとしても、それが近くにあるとは限らないしな。かなり大きなこの縦穴は4・50メートル位の大きな穴を開けている。その周辺にはびっしりと沢山の花。やっぱりこの穴の下から生えてきてる様に見える。もしかしたらこの穴から出てきてるのでは? とか警戒したんだが、姿は見えなかったから俺達は穴の周囲に集まってる。花を踏み荒らすことになるが、これだけあるんだから少し踏んでも良いだろう。

 こうやって踏んでても何も起こることはないし、多分バレたりはしてない筈。それともこの穴の下へと誘ってるのか。というか、ここら辺は最初からこんなに花が咲き誇ってるんだろうか? 前はこうではなかったら、何か変化があったとみられる。でもそれを確かめる術もない。行き当たりばったりというのは心臓に悪い。せめて俺達の接近が感づかれずに、そして一人ずつやれれば……それがベストなんだがな。この新装備の隠密性に期待するしかないか。

 だが昨日とてもこの森は騒がしかった筈。なにか異変を感じ取っててもおかしくはない。というか普通は異変を感じてる筈だ。流石にあんな事が起きて、しかも今は森に動物とか一切見当たらないのに、何も感じてないとしたら……お気楽が過ぎる。そんな楽観的な想定はしてられない。俺達は対象が最大限に警戒してるとみて行動すべき。

(未知の種というのはやっかいだな)

 植物を操れる位は情報として聞いてるが、それだけとは思えない。

「ここから降りるとなると、俺達は装備があるが、リリアはどうする?」
「私の事はご心配なさらず。やりようはいくらでもあります」

 そういうリリア。普通ならもっと具体的に聞いたりするが、魔王であるリリアにはそれは野暮って物だろう。本当になんだって出来る奴だ。なので俺達は遠慮せずに自分たちで準備を進める事にした。

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