美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H33

 ブシャー、プシャーと大きな花の中心から毒々しい色をした何かが出てる。周囲に広がり普通は拡散して消えていくそれの筈だけど、あの場所はその花が密集してて常にプシャープシャーとやってるせいで、空気中が紫色に見える。絶対に毒でしょあれ……毒じゃなくても、絶対に何かある。

「まあ、関係ないけどね」

 でも私は臆さない。何故なら……私は魔王だからだ。何も躊躇わずに進み出ると、ボコボコと地中から根が這い出てきて向かってくる。

「こんなもの」

 私はそれを手刀でもってバッタバッタと切り倒していく。こんなので私の足を止めることが出来るとでも? 魔王を侮りすぎでしょう。でも数だけは多い。なにせここは森の中。根なんて幾らでもあるって事だろう。それなりに強化はされてるようだけど……相手が悪い。私じゃなかったら、こんな攻撃でもかなりの威力だっただろう。数も大いしやっかい極まりなかったと想像できる。

「めんどい」

 私は腕を前に出して黒い塊を収束させる。そしてそれを解き放つ。私のマナを圧縮解放する事で前方百度くらいが直線三キロに渡って消し飛んだ。

「こんなの物か……ちょっと想定よりも威力が出来なかったかな?」

 私的には物足りなくてそんなことを呟いた。だって本当は五キロ位を消し飛ばすつもりだったのに。多分無駄にでかい木が多かったからだろう。全く私の力の邪魔をするとは不届きな木共である。まあけどこれでかなりここの換気も良くなった。そのおかげか、紫色した毒々しい空気が流れ込んできた風によって拡散していく。

「森らしく、空気も美味しくなったし……汚染物質は完全に除去しないとね」

 私はそう呟きつつ、手を残りの花に向ける。すると花自体がビクッと成ったような? そしてボコッと地面から水から抜き出てそして走り出した。

「あらあら、愉快な生物だったんだ。でも――」

 私は今度は収束させた黒い球に自分の腕を突っ込んだ。ピリピリするね。流石に自分ちからだけあって私の体を傷つけるだけの力がある。一応ちゃんと保護してるんだけど、その保護と競合してるのが肌に伝わってきてるんだろう。もうちょっとバリアの出力を上げた方が良かっただろうか? でもあんまり上げすぎると、バリアの力でこの黒い球の方の力が拡散されてしまう恐れがある。加減が難しいんだよね。
 とりあえず私は一歩を踏み出す。まあそれで高さ十メートルくらいまで飛ぶんだけど。木々が消滅した場所を走ってるアホな花がよく見える。私はその中の一輪の花に向かって腕を振るった。

「――逃がさないよ」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品