美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H25

「私もついていきます。いや、いっくよー」

 何で言い直したのかはわからない。けど何かこだわりでもあるんだろう。さっきまでは偉そうな格好してたけど、今は普通に庶民らしい、冒険者らしい武装をしてるから、口調もそっちに寄せてるのかも知れない。けどその美貌は抑えられてないからな。はっきり言って冒険者では通用しないと思う。まあそれを言う必要なんて無いんだし、意味ないが。それよりもやっぱり厄介事に成ってる事だ。
 全く俺の勘は良く当たってしまうな。そういう運命を背負ってるんだろう。困った物だ。

「えっと……良いんですか?」

 とりあえず拒否って手もあるが、多分それは無駄だからもっと別方面からお断りをして頂く。何せ彼女は魔王だ。魔王には権力がある。それは俺達なんか及ばない物。そしてその力もそうだ。さっき俺達は彼女に屈服したんだ。その記憶は鮮明にあるし、何せ体というか、魂に刻まれてる。だから明確にいやなんて言えるわけ無い。なら搦め手で行くしかない。

「良いって何が? 今の私は魔王じゃなくて『リリア』と呼びなさい。助っ人として参加するただの魔族のリリアよ!」
「リリア……様?」
「リリア」

 にっこり笑って魔王ミリア事リリアが迫ってくる。その笑顔は見惚れるほどだ。寧ろ見惚れない奴なんて居ないと思える程に美しい。だがなんか寒気も一緒にある。

「りり……あ」
「はい、よく出来ました」

 そう言って俺以外の奴らにも視線を向けるリリア。すると全員が首を縦に振っている。

「リリア……えっと仕事とかがあるのでは?」

 何せリリアは魔王だ。立場が上なら、忙しい物ではないだろうか? それに魔王はトップだ。そうなると……色々と大変な筈。魔王国だってまだまだやる事が多いんじゃないだろうか? トップがいないと決められないこととかあるんじゃないだろうか? そうなるとこんな遊びに付き合ってる場合じゃないはずだ。

「そんなのどうにでも成るものだから……心配しなくて大丈夫よ。うん? 全然大丈夫だから!」

 なんかキャラが定まってないリリア。普通にしてて欲しいが……やっぱりそういうことは言いにくい。てか仕事は大丈夫らしい。まあ魔族と人種では違うだろうからな。人種は色々とやっかいな部分があるが……魔族はそうじゃないのかも知れない。そもそも魔王は絶対の存在って感じだ。彼女が言えば、下の者達は首を縦に振るしかないのかも。そうなるともう、どうあっても無駄だな。

「そうですか……」
「そう、だから諦めて。大丈夫、足手まといには成りませんから」

 そう言って可愛らしく首をかしげるリリア。普通はこんな美少女にお願いされれば嬉しい物なんだが……全員微妙な顔をしてた。何せ俺達は厄介事を引き受けてきた部隊だ。彼女、リリアの参加にその勘が言っている。

「こいつは厄介事を運んでくるぞ」ってな。

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