美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

閑話 ある日のユングの苦悩11

 向かい合って小さなテーブルを挟んで座り合う。背が高いスナフスキンの巫女はそれでも全然高く、立ってる? 実は立ってる? と思うほどである。一応かなり高い椅子に座ってる筈なんだけどね。なにせ目の前の存在に併せて作られた椅子だ。いや、ん? なんか違和感があるような……ここはそういう場所なのだろうか? 僕はちょっと気になって目の前の白い小さなテーブルに触れてみる。半分くらいに日が差し込んでてテーブルを照らしてる。僕は光の中へ、そしてスナフスキンは陰へと入ってる。
 触れたテーブルは確かにそこにある。いや、当たり前だよね。別段何か変な感触がする……なんて事もない。確かにちゃんとしたテーブルとして存在してる気がする。

「どうしました?」

 なにやら、僕を怯えた目で見るメイドさんが二人分のお茶を用意して持ってきてくれてる。このテーブルは小さいからね。二つのティーカップを置くとそれだけでギリギリだ。本当はお茶菓子とかも起きたいだろう。苦肉の策として彼女は白い紙の上に小さなカラフルなお菓子を二つおいた。一口で食べられそうな奴だ。クッキーとかともちょっと違う、もっと可愛い感じの奴だ。

「いえ、ありがとうございます」

 とりあえずお礼を言っておく。怯えさせてるからね。僕がお礼を言ってる間に、既にスナフスキンの巫女はお茶をすすっていた。当たり前の事だから、僕がいたって彼女の行動は変わりはしないらしい。

「気付いたか……」

 ボソッとそんな声が聞こえた。何が? と思ったが、彼女は置いたティーカップを見てる。いや、違う。もしかして、僕が触ってたこのテーブルをみてるのだろうか? そして今の発言……やっぱり何かある?

「貴様の中の奴にでも聞いたか?」
「別に……そんな事は無いですが……それに、違和感がある程度です」
「まあ人種ならその違和感すら持てないんだがな」

 そう言ってスナフスキンの巫女は何やらその細長い指を揺らした。するとその時から、この光景が一変した。ちょっとオシャレな一室だった筈なのに、全てが無機質な色へとなって、何か材質がわからない物へとなった。質感も変わってる気がする。今まで木の椅子に座ってたと思ってたが、まるで鉄の上にでも座ってるかのような……それに何やら、微妙にその全てが動いてるような……

(正体を現したな……)

 そんな風にアラガタが言う。なんだろう、やばい感じがビンビンとする。ここに居てはいけないと直感が言ってる様な? 

「少し熱かったでしょうか?」

 そんなメイドさんの声に彼女を見ると、別に彼女は何も反応してない。多分、今も彼女にはさっきまでの光景で見えてるんだろう。僕は彼女を不安にさせない為にもお茶を流し込んであげる。自分も落ち着きたかったしね。とりあえずお茶を飲むと、ちょっと心が落ち着く。

「これは……一体?」
「ここは……私の腹の中だ」
「はい?」

 ちょっと何を言ってるのかわからない。払って、目の前に本人居ますが? どういう事なんだ? 

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