美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

閑話 ある日のユングの苦悩5

「なんだ……ここ?」

 思わず口を突いてそんな言葉が出てきた。後ろを振り返ってちょっと進んでみる。壁とかにぶつかるとはしない。

(実は幻覚的な物かと思ってたんだけど……どうやら違うみたいだ)
「ここは亜空間に作られた場所……のようですよ」

 僕を待ってたメイドさんがそう言ってくれる。

「亜空間……ですか?」
「さようでございます」

 軽く頭を下げて微動だにしないその姿。あれだね。こっちもわからないから、それ以上の追求はしないで欲しいって感じの姿勢だね。僕だって一人の王子、いや自分的には王子なんて肩書きはいらないんだけど、世間的にはどうあがいたって、そうなんだ。なにせ僕はお父様とお母様の息子なんだからね。大抵の人はかしこまる。面と向かって僕に文句を言える人の方がすくない。
 でもだからって調子に乗るなんて事は無い。この場合、彼女――

「亜空間をもっと具体的にいえ!」とか「説明が足りないんじゃぼけ!!」

 ――とか言っていびる事も出来なくはないが、そんなことはしない。だってそんなのイヤな奴だ。僕は確かに立場を持ってるが、それはたまたまなんだって、過ぎた物なんだっておもって無いといけない。僕の評判だって二人へと向かうんだ。

「ここには一体誰が?」

 とりあえず亜空間的な部分はスルーすることにした。だって聞いてもわからないし、向こうも聞いてほしくなさうなら、無理に触れる事はないだろう。僕の質問にメイドさんは頭を上げてこういった。

「それは御自分の目で確かめた方がよろしいかと」

 言えない……と来たか。お父様にもやんごとなき方だとは聞いてる。人種じゃないやんごとなき方……か。そんな人が居ただろうか? 合流してきた種の中の超がつくVIP? でもそれは今更……あの戦いの後も合流してきた種なんて居たっけ? 結構もう、この世界の勢力は固まってる。こちら側か、あちら側……まあ一つ、小さな、それこそ、寄り集まりの様な国があるが……勝ち馬を求めるのなら、そっちに行くのは低い。

 まあ 僕も合流してきた種の全部を把握してる訳じゃないし、多分新しく合流してきた種の中の誰か……何だろう。そんなあたりを予想をしつつ、僕は建物に近付いた。赤い屋根の小さな家で、なんだかオモチャみたいだった。それをそのまま大きくしたかのような……煙突もある。もくもくはしてない。森の中にぽっかりとあいた空間にたたずむ様なこの建物……さっきまで城に居たのに違和感しかない。こんな事が出来てしまう……のか? 
 もしかしたらこれってエデンの新しい技術かも。ここの家主がこれをしたなんて情報はない。

(とりあえず気負うな。こういうのは最初が肝心だ)

 僕は層心で言いつつ、ノックをする。でも返事がない。メイドさんを確認すると『大丈夫です」と言われる。その言葉を信じて僕は扉をあけた。

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