美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

閑話 魔王ミリアの日常

「魔王様!」
「魔王様!」
「魔王様!」
「はいはい、わかってるわよ」

 私は魔王城の一室でどっしりと座って眼前に頭を垂れる三人を鬱陶しげにみる。ここは魔王城……と言ったが、別段人種の皆さんが想像するような禍々しい物ではない。寧ろもっと荘厳で美しい場所だ。まあ元の魔王城はそれなりに禍々しくはあるが、元の魔王城のあった所は辺境だから移転した。
 魔族という種事ね。それはちゃんと人種の王である兄様の許可も、そしてあの女の……ギリギリと悩ましいが許可を得て、私達魔族が奪い取った土地に築城した。

 効率的に、城下なんて物はない。ここは城であり、魔族達の家であり、そして出撃地点なのだ。人種の城よりも数倍の面積、領をまるごと城にしてるみたいなイメージだ。形としては四角である。長い四角を縦に突き刺して作った。

 私の中には亜子の記憶がある。なので向こうの世界の建物をイメージして、コンクリートジャングルと言う物を再現してみた。まあコンクリートが何かしらないけど。一応外周部は城壁をグルッと作っておいた。全ては魔法のおかげで、何十年かかるんだって建築作業が、十日くらいで終わって私達はここに移転してきた。

 ここは人種の領域からもそれなりに離れてる。今までは星からのマナの影響で、こっちもクリスタルウッドの範囲外に行くのは辛かった。住むなんてもってのほかだ。だがこの前の戦いで空を圧迫してた星は消滅した。だから違う星のマナになやまされる事はなくなったから、ここに移転する事が出来た。

「こちらの苦情をご覧ください!」
「騒音の問題がですね」
「電気不足が深刻です」

 むむむ……なんで私がこんなことを……魔族は魔王絶対主義だから、なんでもかんでもこっちに回してくる。なので、こっちは大変極まりない。だから電気なんてエデン発祥のエネルギーなんてやめとけっていったんだよ。あのクソ女がまともなのこっちに回す訳ないじゃん。

 だと言うのに、魔族が戦闘だけに力を使える様に日常の事は効率良い電気を~とかプレゼンされちゃってさ。この城を作るに当たって色々とエデンから技術者を借りたんだよね。そのときに電気なんて物を導入して見たのが間違い。

 色々と問題起こってる。これはエデンに苦情を言おう。

「電気の事はエデンに言いなさい。この際脅していいわよ」

 これで一つ解決だね。人種は弱い。けど今は協力し合ってるからって対等って立場だ。表向きはそれで良い。けど舐められたらいかんよね。私は人種の記憶もあるし、心が全部魔族に染まったわけじゃない。だから人種を思う気持ちはある。
 でも、それと同時に、魔王の自覚もあるんだよね。だから魔族を見捨てる事もできない。こんな世界を一度終わらせようって魔王を慕ってついて着てくれてるしね。
 まあ魔族にとっては死は終わりじゃない。死したとき、それはクリスタルウッドへと帰って私の力となることと同義だからだ。だから彼等に死の恐怖なんて物は存在しない。
 こんな小娘なんかよりも遙かに長い期間、生きてきた筈の魔族の人たちが自分にペコペコするのは変な感覚だ。

「次は騒音……魔法でなんとかしなさいよ」

 人種と違って魔族は高い魔力を生まれ持ってる。遮音の魔法でも使ってよね。

「それがそれを上回る拡声魔法が使われてるらしく」

 何その迷惑掛けるだけの魔法は。アホな事に努力する奴もいるものである。

「魔王様が決闘を禁止になさって直接的な力を行使できないのです」
「なに……それは私への批判なの?」
「いえ、滅相もない!!」

 しまった、思わず威圧がでちゃったよ。魔王という存在だからね。油断すると、恐怖で私は彼等を支配できてしまうのだ。でもそんなのは望んでない。けどそうか……決闘出来ない殴って解決というのが出来ないと……魔族のしきたりというか、ルールをちょこちょこ変えてるからね。その軋轢がある。

 魔族はいつだって退廃的に生きてた。だからそれを改善したいんだけど……ただ普通に生活するってだけでも魔族にとっては大変な事らしい。

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