美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω195

「やっぱり私達なんて眼中にないみたいですね」
「あれだけ強大な存在だ。いくら俺達が追いかけても追いつけるものじゃないんだろう」
「弱気ですか? 英雄ともあろう方が」
「現状の認識だ。英雄かどうかじゃないが……諦める気はない!」
「そうですね!」

 私とカタヤ様は通信越しにそんなやり取りをする。私もカタヤ様も実はかなりビビってる。だからこうやって話をしてそれをごまかしてるんだ。実際、私達は三人、いや……四人がかりでもアラガタには勝てなかったんだ。あの時、アラガタが引かなかったら、私達は多分死んでた。

 そのアラガタが今はあの時の数倍……いや数十、数百倍の大きさと力となって目の前にいる。これで恐怖しない奴なんて、そんなのは感情が死んでるとしか思えない。でも、私達は恐怖しても向かうんだ。だってそれが英雄だから。守るべき人達がいる。その人たちに背を向けるなんて私達にはできない。

「ついてこい!!」

 そう言ってカンガタが前を行く。内部に入らないといけない訳だけど、私達のアンティカ程度の攻撃ではきっとビクともしないだろう。それほどに今のアラガタは強大だ。でもカンガタは止まらない何か策があるのだろうか?

「どうするの?」
「我とアラガタは元は同じ存在だ」
「そうね」
「それを利用すれば、中に入れるはずだ」
「利用って……どうする気?」

 理屈的にはわかる。元が同じだからなにか出来るんだろう。それが何かはわからないが……でもそれには当然リスクというか……そういうのもあり得そうな気がする。私達はアラガタの体まで数メートルというところまで近づいた。

 そこでカンガタが腕を前に出す。そしてちらりとこちらを見ると、こういった。

「少し我慢してもらうぞ!」

 するとその瞬間、カンガタの背中が大きく開く。そして黒いゴムの様な物がゼロとファーストへと絡まった。

「なに!?」
「おい!」
「暴れるな! 俺を信じろ!!」

 そう言われると、私達は大人しくするしかない。アンティカに絡みついたゴムはカンガタへと私達を引き寄せる。そしてがっちりと背中にホールドされた。その時、ガチンと体がぶつかり合ってグワングワンしたよ。

『何かが、システムを侵食しています。このままでは……』

 ゼロがそんな事を申告してくる。カンガタはアラガタの装甲へと手をついてる。するとその硬く厚いはずの装甲にヌルってな感じで腕が入ったのが見えた。

「カンガタを信じよう。何もしないでゼロ」
『ですが……』
「お願い」

 私はそういった。カンガタはやってくれる。だって私達は戦友だ。一緒にこの戦いを戦ってきた。だから……信頼するには十分だ。

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