美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω193

 星が爆発を起こした。それは初めて見る光景。その筈だ。その筈なのに……なんだろう。既視感がある気がする。私はゼウスのドックの中でそれをみてた。皆がその光景をみてる。まあそれはそうだよね。何せ星の終わりを見るなんて一生の内にあることじゃない。

 なにせ星の寿命は生命の中でも桁違いに長い。普通に生きてて、星の寿命に巡り会うことなんかない。その超希少な光景に巡り会えたのだから皆がこんな風になるのも納得だ。

 私だって星の爆発なんて初めて見ると思うんだけど……なんか皆ほど感動してない自分がいる。私だってこの苦労の末の勝利を分かち合いたいんだけど……

「まだだ!」

 外にいるカンガタがそう叫ぶ。一気に叫ぼうとしてたドックの面々が、そのカンガタの声で溜めた腕をどうしていいかわからなくなってるじゃん。それにまだって言っても、実際に星は消し飛んだ。一体何がまだだというのか。

 このゼウスではまだ勝利の咆哮を叫んでなかったけど、私たちの星の方ではきっと「うおおおおお!」とかやっちゃってるよ。なにせ見えてるだろうし。

「もう諦めろアラガタ!!」

 そう言ってカンガタが爆発の方へと飛んでいく。むむ……どうやらアラガタとカンガタの繋がりで何かわかってるみたいだけど……ここからじゃ……

「ん?」

 爆発の中から、何かが生まれるかのようにあらわれる。蝶がサナギから成体を出す時のように、背中が盛り上がり、そして解放される様に頭と両腕が広がる。

「アラ……ガタ……」

 私の声は掠れてたかもしれない。なぜなら、その大きさだ。今までもアンティカ並というか、それよりもわずかに大きい位の大きさだったが、今のアラガタは星を超える大きさになってる。まさに星をサナギにでもしてたのか? ってくらい。

 でもあの星は出がらし……というか、何ものこってなかった筈だ。なのにあれだけ巨大に……そしてあふれ出る力を感じる。おかしい……けどいってる場合じゃない。

「よこ……せ」

 野太い声が聞こえた。頭に直接ひびく様な声で、嫌悪感が湧き出るようだった。けど、人によっては怒りとかを呼び起こすのか、ドックにいる人の中でいきなり暴れ出す奴が出る始末。この不快感は精神干渉の影響なのかも。こんな回りくどいことをアラガタがするとは……いや、あれはアラガタといっていい?

「よこ……せ」

 それを何度もつぶやいてる。もしかしたらああなった影響で自我が薄れてるのかも? いくらアラガタが凄い奴でも、あれは……ね。無理してるとしかおもえない。でもその力はやばそうなのに変わりは無い。きっとあいつは、自身の星を食い、さらには私が打ち込んだ力も食ったんじゃないだろうか? だからあんな超絶な事になったんだと思う。

「よこせえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 大きく体を伸ばして私たちの星をがっちりと両手で掴む。完全に私たちの事を無視してる。奴はもう私たちの様なちっぽけな存在は見えてないみたい。ただただ、星を食らう、そんな存在にアラガタはなったのかもしれない。

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