美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω171

「歌が聞こえる……けど、この歌声は……」

 耳を澄まして聞くと、それがプリムローズの誰の声でもないことに気づく。一体誰の声なのだろうか? わからない……だから私は呼びかけてみることにした。

「おーい、どなたかそこにいるの?」

 そう呼びかけて私は再び耳をその陣の集まりに、というか集合体? に近づける。けど別段歌が止まることもないに反応も何もなかった。まあ期待してたわけじゃないけどね。

「なんなのこれ?」

 私はそう言って白いカラスをみる。でもカラスは何も教えてくれない。ただこっちを見てるだけだ。私が何かをやることを待ってる? というか期待してる? そんな見つめられると緊張するんだけど……嘘だけど。別に今更カラスに見られてるくらいどうって事無い。
 
「時間も無いししょうが無いか」

 私はそう言って意を決する。グズグズしてる暇はないのだ。私はプリムローズのみんなの所にもいかないといけない。まあけどここで何かできるのなら……それを見逃す手は無いと思う。何かありそうじゃんここ。てかあるはずだ。
 
 この白いカラスはきっと世界の柱に連なる何かだと私の勘が言ってる。なら状況をわかってるはずだ。このままじゃ別の星の世界樹にこの星は食われてしまうのだから。それを防ぐ手助けをしてくれる可能性は十分にある。そのために必要な物がこれなら……ここで何もしないなんてイイ女である私としてもあり得ない。何せ私は宇宙一の美少女だからだ。

「ふん!」

 私は手にマナを纏わせて手を陣に突っ込んでみた。何の抵抗もなくあっさりと手が陣に沈む。あれれ? だ。本当はもっと抵抗があると思ってた。あれかな? 私の手にある纏わせたマナが純なマナだったからだろうか? 周囲のマナと同じだからね。

 これに反応してたら常に周りのマナに反応することになる……か。

「うっ!?」

 なんか背中がゾクッとしたから私は手を引っこ抜く。

「げっ!?」

 けどその引っこ抜いた手にはちょっと信じられない光景があった。なんか私の指の先に陣がくっついてる。丸い魔方陣がそのままくっついてたらまだよかったと思う。けどそうじゃない。なんか陣が糸をひもとくみたいに一部を私の指という存在に絡みつけてる――みたいな? 

「なにこれー!!」

 私は自分のきれいな指が変色してるのが許せなくて引きちぎろうとする。けど無理だ。できない。全然切れない。伸縮性ありすぎ。

「なんで」

 この場所は私のホームのような物だ。なのに私の干渉を受け付けないこの陣は謎でしかないどんどんと陣が私の中へと入ってくる。

「調子に……乗るな!!」

 私は別のマナを取り出して対抗することにした。それはもちろんゼルのマナだ。それはあたりだったのか、ゼルのマナが浸食をとめてくれる。けどその瞬間白カラスがわめきだした。うっさい。けど、とても私を責めてるような? 何? なにか私まずった? 

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く