美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω158

「やばいか?」

 私はちょっと腕を動かす。マナを温存しておきたいし、この状態じゃろくな事は出来ない。けど、アラガタではなく、アンティカに干渉とかなら出来るのでは? と思った。あの剣を受け止めるなんて溶けてる様に見えてもやはりアラガタの奴は頑丈らしい。

 このままじゃカタヤがヤバイ。アラガタは器用に片手で振り下ろされた件を止めてるから。片手はフリーだ。肉を切らせて骨を絶つ精神なのか……その拳を握ってる。あの距離はヤバイ。カタヤは一度剣を手放した方がいいんだけど、そうする気配はない。

 不可がアンティカに掛かるが、しょうがない。このままじゃコクピット事つぶされる。私はマナを視線越しに送る。けどその時、拳をそらすためか、肘の所にゼロの攻撃があたった。結局の所ファーストの半分くらいには当たって剣を掴んでた腕から引きちぎれて後方に飛んで行ったが、それでも生きてはいるだろう。

 それよりも私はもっと気になる事を見つけてた。

「あれは……ユング?」

 なんかその存在を感じる。ドロドロとアラガタがしだしたからか、その存在がにじみ出てるような? 星の中で戦ってる時はこんな気配なかったはずだ。どういう事? そういえば、カンガタも車長さんを取り込んでるはずでは? なんか何となく状況的にそのままなんだが……彼は最終的に無事なんだろうか? 

 私はカンガタの方にも視線を飛ばしてみた。やっぱりカンガタも同じようにドロドロとしてる。まあそれはそうだよね。アラガタと敵対してても、もとは同じ存在らしいし……同じようになる事は道理だ。私はここでもマナをいくらか送り込んでみる。やっぱり車長さんの気配がわかる。

 けどどこかアラガタとは違う。アラガタとユングの気配はぶつかりあってる感じがした。でも、カンガタと車長さんの気配は穏やかだ。寧ろ、波長が合ってるとでもいうのか……なんかピリピリした感じがしない。カンガタは戦闘で遠くに飛ばされてたのか、急いで戦闘区域に戻ろうとしてる所みたい。けどカンガタもかなりボロボロだ。こいつマナの供給を受けてないからね。自分の星からはじかれた奴だ。そして存在的に私のマナも受け入れ難い……

「ん? 待てよ」

 ……車長さんは純粋にこっちの世界の住人である。そして二人は混ざり合ってて、こっちはなかなかにうまくやってる? みたいな。なら『届く』のでは? はっきり言ってカンガタにはアラガタと共に沈んでもらいたい。こいつ危険だからね。理想としてはアラガタと相打ちがいい。

 それが一番厄介がない。けどこのままじゃ、カタヤもクリエイトももたないだろう。既にセカンドに乗ってるベールは戦える状態じゃないし……今アラガタが私達の方に来ると、流石に陣を構築する場合じゃなくなる。なら……もっと頑張ってもらわないといけない。

 だから私はカンガタの前にマナでその姿を構築した。服とかは無理でマッパだが、そこは完全に再現ではなく、光でごまかしておいた。別に恥ずかしいわけじゃない。世界で、宇宙で一番美しい私の体に恥ずべき場所なんてないからね。ただ、安くないだけだ。

 いきなり現れた私の姿にカンガタが止まる。私は取り合えず、手を伸ばしてみる。だってこの状態じゃ語りあうとかできないし。するとカンガタも手を伸ばしてくる。まあけど、私がつながりたいのはカンガタじゃない。私はカンガタの中の車長さんへとマナをつなげる。

『ラーゼ様』

 そんな言葉が脳裏に浮かぶ。生きてるん……だよね? わからないが、存在はしてる。ならいけるだろう。

「なかなかうまくやってるようじゃない。私の為にまだこいつを働かせなさい」

 そう頭で思って私はマナを車長さんに託す。伝わったかどうかはわからない。けど、車長さんは頷いてくれた気がする。

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