美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω150

 世界樹の根が覆ってる星に、ゼウスと仲間たちが何かをしようとしてる。アラガタの力の源となってるマナは、あの星だ。なら、あの星をどうにかできればアラガタが弱くなる可能性はある。それをきっとラーゼさまだって狙ってるだろう。

 そもそもがあの星をそのままにしてたら、きっと私達の星に食らいついてくる。なにせあの星は既に終わりに向かってる。あの星に命はなく、マナの循環も成り立ってない。ほかの星の巫女を拉致ってきて、それを養分にしてなんとかマナを生み出してる状況も既に限界。だからこそ、自身の星を食って、それを最後の養分にして、次の獲物……つまりは私達の星を狙ってる。

 そんな星をそのままにしてく意味もない。きっとラーゼ様はあの星を壊そうとしてるんじゃないだろうか? ゼウスといくつかに分かれた部隊は赤いマナで何かを描こうとしてるようにみえる。ちょっと前にこっちにも短い通信で『起死回生の策を打つ、耐えろ』的な短い通信がきてた。

 つまりはそういう事だろう。けど、耐えろ……それがどれだけ難しいか……画面に映る全ての予測が、私の……いや、ゼロの体のどこかへと収束してる。

「回避の術がありません!」
「ちっ!! なるべく行動に支障がない部分をパージ!」

 私とゼロの思いは一致してたのか、左足を私達は犠牲にした。切り離した直後にアラガタの奴の腕に足がつぶれる。けど、ただで犠牲にしたわけじゃない。ギリギリでゼロがマナを仕込んでいた。本当ならそこまで爆発なんてしないが、赤いマナは改造された人工マナだ。

 それなりのルールの元に、簡単な現象を起こすことが出来る。今回はそれは爆発だった。本当なら宇宙空間では爆発なんて機械の中でしか起こらないけど、赤いマナが作用してそれはやけに大きく起きた。

 私達はそれを利用して距離をとる。勿論、こんな距離アラガタにとってはあってない様なものだ。けど、こっち的には助かる。宇宙空間だから足なんてなくてもどうにかなる。でも手は困るだろうという判断だっだ。実際間違ってなかったと思う。

 私は背中を向けて、ある場所を目指す。実はさっきからずっとその場所を目指してるが、アラガタがしつこい。こっちの動きを察知してか、厄介なカタヤ様やカンガタを自立してる腕に任せてこいつがこっちに来るのは予想外だ。

「損傷がひどくなかったら、マナで分身とか作れるんだけどね……」
「今は無理ですね。それにアラガタなら一秒で分身を壊して、二秒で追いつきますよ」
「そういう事言わないでくれる」

 絶望感が増しちゃうじゃん。けどちゃんとルートは算出してくれてる。アラガタのせいで常にルートから外れてしまうけど、そのたびに直ぐに補完してくれる。この素直じゃない感じ、ラーゼさまが言ってた。

「ゼロはツンデレなんだよね」
「変なこと、言わないでください」

 私達は絶望的な状況の中でも、話すことでそれを紛らわしてた。一瞬の判断ミスが命が消える。そればいつもの事だけど、今はそれを肌で感じることが出来る。操縦する手は常に汗ばんでる。だから話してないと、おかしくなりそうなんだ。

 一人じゃなくてよかった。今は本当にそう思うよ。

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