美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω148

 はてさて、ヘビは艦長さんや、オペレーターの総括の人と何やら話し合ってる。私の力をうまく伝える術でも話し合ってるんだろう。私に繊細さを求めないとはこれ何事か……失礼極まりない奴らである。まあいいんだけどね。
 私の力は膨大である。そんな膨大な力を持つ私は、私的に極力抑えたつもりでも実はそうでもないらしい。さっきも私的にはかなり抑えめにマナを送ったつもりだった。けど、ご覧のありさまである。

 まったく、これだから常識と言うやつは私という存在の枠に収まらない。まあ私が規格外過ぎるのがいけないんだけどね。だから私的には極力絞ってマナを上げても与えられる側にとっては過剰……という事がよくある。今回もそんな感じになってしまったら、何とかルートに回復しようとしてるあの一般兵の人達が今度こそ瓦解するだろう。そうなってしまうと、星を壊すためのあの恥ずかしい名前の陣が完成しない。

 それは困る。だからまあ、ここはヘビたちがどんな案を持ってくるか楽しみにしておきましょう。最悪、マナを使って彼らを操れば万事完結……しないか。かれらは数十人はいる。それら全員をマナで操ってさらに複雑な、星を包む規模の陣を描く? 

 んーちょっと無理っぽい。私はそんなに頭よくないし。そんな事をやろうと思ったら、頭爆発もんだ。それにそれなら、私がマナを使ってあの星を覆って、無理矢理その陣を転写した方が早いし。

「ん?」

 私は自分のアイデアをそっと胸の中に秘めておくことにした。なにせ私はこんな優雅にしてるが、周囲はとても慌ただしく動いてるんだ。この作戦を完遂させるために、皆さん必死で、そしてそれはここにいる人達だけじゃない。
 このゼウスにいない人たちも皆頑張ってるだよね。だから私がその頑張りを摘んでしまうなんてできない。そもそも流石にマナを使って下手に包むと、あの星が私のマナを食うかもしれないしね。なるべく星には接触しないようにして、赤いマナで陣を描くのも意味のある事なんだ。

『ベール様逃げて!!』

 そんな声が突如響く。今のはクリエイトの声。切羽詰まってた。直後、常にアンティカをモニターしてるオペレーターの人から報告が届く。

「セカンド、武器と右手脚を損傷、戦闘継続は難しい状況です」

 その報告にゼウスの中がざわつく。だってそれは均衡が崩れた事を意味してる。それに一番安全ぽいベールが真っ先にやられるってどうなの? 離れてるからって油断したか? あのバカ……

「同乗者は無事なの?」
「はい! バイタル反応はあります!!」
「そっか……」

 私はホッと胸をなでおろす。でも実際、全然胸をなでおろしてる場合じゃないよね。アラガタが暴れてる向こうは大丈夫だろうか? 陣を完成させないと、ベールの回収もできない。どうにか皆生き残っていてほしい。星さえぶっ壊せれば、アラガタは大幅に弱体化するはずだ。それまでなんとか……

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