美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω112

「うん?」

 なんかラーゼ様の声が聞こえた気がした。気のせいだろう。だって私にはそんな超感覚ないし。そろそろこの装置の起動の終わりも見えてきた。次で最後だ。最後はカンガタが置物として置いてあったあの場所だ。あいつを追いかける為にそこの装置の起動を後回しにしてたからね。

 けど……

「いけるか? いや、行くしかないけど……」

 世界樹の根が私を待ち構えてる。その数は二本増えて三本になってる。くっ、数を増やして来るなんてズルい。案外私がすばしっこかったんだろう。実際、ここまで来てるからね。既にこの建物の周囲の建物は予めあの根によって壊されてて、奴らにとって有利に整えられてる。

 障害物もないからさぞや私を追いやすいだろう。不味い……いままでは建物を盾にしたり、視界を塞いだりしてたのに。まあ奴らに視界があるのかもは実際わからないないが、ここまで逃げれたんだから、有ってもおかしくないと思ってる。

 けど、今やそれらは予め壊されてる。一応三百メートルくらい駆け抜けれればまた建物はある。あくまで奴らが崩した建物は今いる建物の周囲だけだ。それでもこの建物の周囲三百メートルくらいとなるとかなりの建物をぶっ壊してるけどね。

 かなり見晴らしがよくなってる。ここを走り抜ける……かなり難しい。建物自体には今までと同じように手を出す事はない。だからこんなゆっくり出来てるんだが……空を見ると、見えないがアラガタとカンガタの激しいバトルの音が聞こえる。

 どのくらいカンガタは善戦してるのだろうか? もしかしたらカンガタがアラガタを案外倒してしまったり? とか思うのは希望的観測過ぎるだろうか? 

「なに弱気になってるのよ。軍人は常に最悪を想定して動くべし――でしょう」

 そう学生時代に教わった。そして任務は絶対だ。今の私の任務はこの装置を全て起動する事だ。このくらいで十分だろうなんて自分の裁量で判断なんて許されない。けど困った。流石に三百メートル程もある見晴らしいのいい場所では逃げられない。
 かといって奴らがバキバキと建物を壊して中逃げるのもリスクがあり過ぎた。なにせ崩壊に巻き込まれるかもしれなかった。この小手があれば、幾分か対応できる。

 けど、それには私の反応速度もかかわってくるわけで、小手は二つの腕に一個しかついてない。どうあっても反対側は疎かになるし、無数の瓦礫に対応するのは難しい。カンガタもケチらずにどっちの腕にも小手をくれれば……いや、そんな文句を言っても始まらない。

「地下……とかは……いやダメだ」

 カンガタが地下を進んでたのを思い出したが、そもそも根って地下にあるものだ。それに地下だとこっちの行動だって制限される。襲われたらひとたまりもない。何か何かないか? 私はあたりを見回す。ここも生活感がない家な感じなんだよね。
 地下には鎧がいっぱいあったが、それだけだ。部屋には一応家具とかあるが、あるだけって感じ。

「そういえば、あの家具の模様替えの様な装置……あれをつかってカモフラージュとか出来ないかな?」

 色変えたり出来る奴があったはずだ。そこまで確認してないが、この建物は構造的に前にそれがあった建物に似てる。ならある筈だ。あれを使えば迷彩として利用出来たり? この小手の万能さに期待しよう!

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