美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω101

 一体何が始まったのか……やつはここの住人ではないのだろうか? 目の前で始まったのは、鎧と世界樹の根の戦いだ。いや、それは語弊があるだろう。根は相変わらずラーゼ様を狙ってる。けど、それを鎧が悉く防いでる。

(今のうちに逃げる? いや、世界樹の根はこの星の全てに根を張ってる筈。今一番安全なのがここなんだ)

 私は自分の考えをそこで結論付ける。本当なら、敵同士が戦ってる間にラッキーと思って逃げるのが得策だろう。けど世界樹の根から完全に逃げるなんて出来ない。だからこそ、その考えは通用しない。なら世界樹の根を楽々と潰せる奴の傍が一番安全ではある。

 もちろん前提としてその相手がこっちにその矛先を向けなければ……だが。

「そこの女……ん? ラ……ラーゼ……ラーゼ様? なんだこれは?」

 鎧から漏れる言葉がぶっきらぼうの物からなんだか変わっていった。ラーゼ様の事を「女」と称してたのに次には「ラーゼ様」という呼称に代わっている。まさか……その考えはどうやらラーゼ様も同じようだ。上方をみて呟いたのか私には聞こえた。

「車長さん?」

 彼はあの鎧に取り込まれてしまった。彼がどうなったのかまだわからない。あの鎧の中に入ってるのか……それとも分解とかされてしまったのかさえ定かじゃない。あの鎧は沢山の鎧を取り込んでいた。普通なら取り込んだ分……いやとりこむってなんだよって思うんだけど、単純に考えたら取り込んだ分色々と増える物だろう。

 けどあの鎧は見た目的に変わってなかった。取り込んだ分の鎧は一体どこに行ったのかって疑問はある。私達が食べ物を食べる時に噛んでそれを砕く様にしてるとしたら、車長さんもかみ砕かれたって事に……でもどこか彼はあの鎧の中で残ってる感じがある。

「何を言う? 我はこの世界の神より分けられた分神『カンガタ』だ。シャチョウなどという物ではない」

 なんか思いがけず、目の前の鎧の正体が判明した。いや、まだよくわからない所は多い。分神とかさ。そもそも神とは? ここを与えられた種の事? 

「いいえ、車長さんは貴方の中に確かにいるわ! 気づきなさい『ロウヤ・ジャナス』!」

 私は誰? と思った。けど直ぐに思い至る。きっとそれは車長さんの名前だろう。ずっと車長さんとしか呼んでなかったから私は知らなかった。けどラーゼ様はどうやら彼の本名を知ってたようだ。最初からしってたのだろうか? それともここに来てから世間話の中で聞いたのだろうか? 皆車長さんと呼んでたじゃん。

 一番仲良かったユングだってそう呼んでたよ? だから私は皆知らない物だと思ってた。だけど実はそれは私だけだったのかもしれない。

「我は……なんだこれは?」

 鎧の動きが止まる。一体あの鎧、カンガタだっけに何が起きてるのか私にはわからない。けどカンガタの動きが止まった事をいい事に世界樹の根がこっちに向かってくる。

 けどそれを気にせずにラーゼ様はカンガタに向かって言うよ。

「そこにいるんでしょうロウヤ・ジャナス! 力を得たのなら私を守りなさい! 成すべき誓いを思い出しなさい!!」

 ラーゼ様は凛として前を見てる。迫る世界樹の根に一歩も引けをとらない。そして次の瞬間、カンガタが私達を守る為に世界樹の根を薙ぎ払った。そしてそれを確信してた様にラーゼ様はニヤリと笑う。

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