美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω94

 私達は地下を進む。途中で行き止まりとなるが、そうなるとどこかに横穴が開いてるからそれを見つけて更に進んだ。穴の方向にあの鎧は確実にいる筈だ。かなり進んだと思う所で、ガンガンする音が聞こえだす。どうやら壁をぶっ壊そうと今まさにしてるらしい。

 私達は頷きあって近づいてく。ようやく追いついたんだ。ここからは慎重に行こう。ここも今まで通ってきた地下に似てる。いくつかの部屋があって、そこには鎧がいっぱいある。どこもかしこも大体そんな感じだった。どこも地下室が隣接してた訳じゃない。

 けどそこは強引にあの鎧は力で穴を掘って目的地を目指してた。私達が通るには十分な大きさなの穴だったが、地中では世界樹の根が蠢いてる。そのせいで奴が掘った穴が崩れるんじゃないかとひやひやとした。けどまあ結果的には無事にここまでこれた。

 あの鎧は一体何を目指して、何をやってるのか……そもそもあの鎧は最初に私達を出迎えた鎧とべつなのだろうか? 分からないことが沢山ある。だから本当なら、あの鎧とちゃんと接触して、情報がえれるのなら、得たい所だが……一心不乱に壁を叩いてるからどうすればいいのやらだ……

「どうしますか?」
「そうね……あの壁はどうやらそうとう堅そうね」

 確かにあの鎧が頑張って頑張ってるのに壁はヒビ一つついてない。今までの場所と変わらない様に見えるのに……あの方向の壁だけが異様に固いのだろうか? もしもそうだったのなら、私達ではまず気づかないことだったろう。
 だってただの壁だし……それともこの上はとても特殊な建物か何かなのかだろうか? 私はあの装置の位置は覚えてるが、地下であの鎧が空けた穴を通ってきたから、既に現在地が不明だ。もしかしたらここにもあの装置があるかもしれない。

 けど今はあの鎧から目を離す訳にはいかない。ずっとガンガンやってたが、流石に無理だと悟ったのか、いったん音が止んだ。これで諦めるのかと思った。鎧はこちらに向かってくる。

「ヤバイヤバイですよ!」
「かか、隠れなさい!」

 これは小声でしゃべってます。私達は隣の部屋の鎧の山へと飛び込んだ。とりあえずこれで隠れれる筈だ。すると運悪くなのか、鎧もこの部屋へとやってきた。何をする気なの? とか思ってたが、奴は両腕を鎧の山へと突っ込むと、その目を光らせる。

 すると奴の元へと鎧がズズズと動き出した。ちょっとしたホラーである。ガラクタの様になってる鎧が、動いてるあいつへと吸われて行く。そうするとどんどとアイツの体に出来てた傷が治るし更にその見た目が変化してる気がする。

 てかこのままじゃまずくないだろうか? どれだけ鎧を吸う気なのアイツ? このままじゃ私達見えちゃうよ? とか思ってると車長さんが「うおっ」といって引っ張られた。どうやら吸われてる鎧の一部が服に引っかかったみたいだ。不味い……このままじゃ車長さんまで吸われ……るのかな? わからない。

 だが、このままじゃ不味いだろう。私は手を伸ばす。けど……その手は届かなかった。そして吸われた鎧と共に車長さんの体が消えた。

「そんな……くっ!」

 飛び出そうとした私をラーゼ様が止める。今じゃない……彼の仇を討つのは今じゃないという事ですか? 私は歯を強く噛んでグッと耐えた。

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