美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω81

 とりあえず私達は逃げ込んだこの場所を調べる事にした。ここは逃げ込んだ建物の地下だ。運よく残ってたこの建物は大きな建物が崩壊して共に支え合ってるその下にあった。上の方はつぶれてたが、それ以外は比較的まともだったから、いきなり崩れるなんて事はないだろう。地下を調べて、そしてできれば上の階も調べたい。けど地下もまだフロアがあるみたいだし、詳しく調べてみようという事になった。

「うっ、開かない……」

 ガタガタと力を込めて扉を引っ張るが扉が歪んでるのかどうしても開きそうにない。きっと世界樹の根が地下を暴れまわったせいで、こういう地下室には影響があったんだろう。潰れてないだけでも奇跡なのかも。なるべく世界樹から隠れる様に……とかおもって地下があったから地下に来たけど、よく考えたら根って普通に地中にあるし、悪手だったのかもしれない。

 けどアレだよね。結局世界樹はこの世界全てに掬ってるわけで、どこに逃げたとしても一緒と考えれば、間違いじゃない。

「こっちは開きますよ」

 そういってるのは車長さんだ。私達は車長さんが開けた部屋に入る。そこには私達が見たこの星の住人……その残骸ともいうべき鎧が積みあがってた。

 いや、もうハッキリ言おう。実をどこの部屋を開いても同じような感じだった。

「もしかして、地下室は倉庫みたいな使われ方しかしてなかったんでしょうか?」
「倉庫……ね」

 ラーゼ様が私の意見を鼻で笑い飛ばす。可能性ですよ? 私だってこんなのおかしいって思ってますからね! そこまで脳みそ筋肉じゃないですよ。

 いくつか詰みあがってる鎧を手に取ってみるが、驚くほどに軽い。何の材質で出来てるがわからないが、これでも硬度はあるようで、無造作に床に放り投げても壊れたりはしない。けど今車長さんが被ってる様な機構はない。まあアレは外の世界から来た人用の処置だから、普通の鎧に施してる訳はないんだが……

「そろそろ、上にいこっか」
「大丈夫ですかね?」
「マナを漏らさなけば大丈夫でしょう。デカいから、奴らは大雑把よ」
「ラーゼ様と同じだとは……」
「ん?」

 めっちゃいい笑顔向けられた。普通ならトゥンクと胸が高鳴る……そんな笑顔の筈だ。ラーゼ様に笑顔を向けられて恋に落ちない生物はいないだろう。けど今の笑顔を見た私には寒気がはしった。おかしい……なぜだ? 最高に可愛い笑顔だったんだけどな。

 とりあえずこの地下には鎧しかなさそうだし、変化を求めて上に行くのは賛成だ。上には鎧じゃない何か別の物もあるかもしれない。そう思ってた。

 緊張して顔を少し階段から出して、様子をうかがう。なるべく慎重に……少し前から地鳴りとかもあまり聞こえなくなってて、世界樹の根の大暴れは鳴りを潜めてるようだ。上手く私たちは隠れられた……ユングの犠牲で。けどそれは今は考えない。必ずこの星には報いを受けさせる。

 けどそれは今じゃない。私達は一刻も早くこの星の謎と対抗する術を見つけないといけないんた。一番近くの扉に私は素早く張り付き、僅かに開けて誰もいないか様子を見る。すると中には人影があった。私は思わず声を出しそうになるが、訓練のかいあってそれは防いだ。ここで私がへまをやる訳にはいかない。

 私は後からついてきたラーゼ様達に扉の隙間から人影を覗かせる。とりあえず声を出しそうになったラーゼ様の口を押える。車長さんがマスク被ってるから多少の声はもれなかった。

「私が制圧します。お二人はここで待機しててください」

 私が小声でそういうと二人ともコクコクと頷く。素手であの大きく頑丈そうな奴を相手できるかわからない。けど、私がやらないと……その為にわたしはいるんだ。私は覚悟を決めて、扉の隙間から体を滑り込ませて音もなく駆け出した。

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