美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω64

 何をラーゼ様が言い出したかと思うかもしれない。けどそうじゃないんだ。元々この列車は飛べる。そう飛べるのだ。今まで地上を走ってたのは、こんな得体のしれない星で無暗に空を飛ぶのは危なそうだったのと、後はマナの消費量の関係だ。

 地上をただ走る分にはそこまで消費しないマナでも、空を飛ぶとなるとその消費量は段違いらしい。車長さんが言ってた。そうなると無暗に飛ばすなんてできない。なにせ今はラーゼ様のマナが頼りだ。規格外のマナを持ってるラーゼ様でも、使えば使う分だけ消費するのは同じ……のはず。

 良くベッドで眠ってるのはマナを回復させる為なんだ。寝るとマナが回復するというのは当たり前だしね。一番マナを使ってくれてるラーゼ様が一番眠るのは当然の事。

「大丈夫なんですか?」
「まあこれくらいならなんとも?」

 確か初日にちょっとマナ使いすぎたな~とか言ってベッドに潜っていったけど……飛ばすことをこれくらいというのならあの程度では疲れないのでは? と思うのは邪推か。ラーゼ様はきっと無理してらっしゃるんだね。救助が来ないとなると、私達の精神的な支えが無くなる。

 そうなると不安が増大していってしまうだろう。それを回避する為に、新しい手段を投じられてるんだ。自身を犠牲にしてまでも……なんて……なんていうお方だろうか? だいたい上司なんて物は、自分たちは安全な所から文句ばっかり言ってくる様な奴だと思ってた。

 いや、第一機甲師団になってからはそれも大分考えは変わってはいたが、ラーゼ様には脱帽だ。いや、ラーゼ様だけじゃなく、本当に国を人種を支えてる人達はその命を張ってると知った。カタヤ様もベール様も戦場に立つし、キララ様もその魔法で沢山の人達を救ってる。口だけの中途半端な地位の奴らとはちがうのだ。

 マナとは命だ。全ての命はマナであり、マナは命そのもの。それを惜しげもなく私達の為に使ってくださるラーゼ様。

 ラーゼ様が貯めてたマナを使ってまずは空に線路が光る。助走をつけて、線路は地面から徐々に浮き上がる様に出来てた。

「行きます」

 そういう車長さんが汽笛を鳴らす。すると徐々に浮き上がって列車が空へと昇っていく。このなんとかふわっとする感じ……案外好きだ。アンティカでも同じような感覚あるからね。

「これ以上はこの車両では無理です」
「わかったわ」

 ある程度上がると横にしか線路が伸びなくなった。ここが限界高度なんだろう。アンティカよりも全然低いのは重さとか色々とあるのかな? ラーゼ様は窓を開けて空に手を伸ばしてる。列車は円を描くように動いてて、それを利用して陣を展開してるみたいだ。いくつもの陣が重なった複雑な陣が完成する。

 ラーゼ様はいつも凄い事をする。私は本当にこの人の役に立てるのだろうか? そんな事を思った。

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