美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω26

「どうかしたか? クリエイト・クーシャネルラ?」
「い、いえ……なんでもございません」

 私はカタヤ様の言葉で変な態勢から脱却して膝をつく。すぐ前には私を騙した生意気なクソガキ……本当なら後で制裁を加えたいところだが、この国の最高権力者達の息子となるとそうはいかない。ぐぎぎ……心で悔しがるしかない。どうにかしてバレずにこのクソガキに社会の厳しさを教える事はできないだろうか? そんな事を考えてると、私の前でなんかちょっと困った様にカタヤ様がクソガキに向かって言う。

「ユング、そんな遜らなくて大丈夫だぞ? 家族じゃないか」
「いえ、公の場できちんと線を引くべきだと思っております」
「まあ、そうだが……今はそこまで固くなる必要もないと思うがな」

 そういってカタヤ様は私を見る。確かに、私も息が詰まるやり取りは出来れば避けたい。けどここは玉座だからね。どっちかというとユングとかいうクソガキの意見が正しいと思う。するとパシッと持ってたセンスの様なので椅子の叩いて肘掛け部分を叩くキララ様。

「そうね、けじめは大切よ。そうでしょ?」

 そういってカタヤ様に向かってほほ笑むキララ様。なんだろうか? 圧力を感じる。そしてそれに折れる様にカタヤ様も「そうだな」といった。

「ご苦労ユング。其方は下がっていいぞ」
「は!」

 そういってユングとか言うクソガキは去っていく。そして出ていった所で私は口をひら……こうとしてやっぱやめた。だってここは玉座だ。こちらから口を開くことは許されてない。声を出すのは王の許可が出てからでないといけない。
 私的には二人の間に子供なんていたっけ? という疑問があったからそれを聞こうとおもったが、ここでなくてはいけない理由はない。なにせ私は第一機甲師団だ。カタヤ様とは接点がある。そしてちらっとキララ様を見る。最近公務に顔を出してなかったキララ様は元気そうだ。二人の間にはついこの間第一児が誕生した。それはニュースになってた。

 けど、あんな大きな……というか生意気なクソガキがいるなんて聞いたことはない。流石にキララ様がずっと前に生んでた……なんてことはないだろう。だってそれじゃあいつできた子? って事になる。まあ英雄色を好むとあるし、カタヤ様が実はやりまくってたって事なら……あんまりイメージは浮かばないがありなのかな? それでも流石に……って感じだけどね。

「変な事を考えてる様だから言っておくが、あの子は養子だ。正当な王族の血を引いているんだ」
「ああ、そういう事ですか」

 カタヤ様達に潰された前王族の一族の生き残りってわけね。けどそれを養子にするとは……大丈夫なの? だって既に二人の間にはお子さんがいる訳で……まさかさっき中庭で黄昏てたのはそれが原因か? 私はふっと悪い笑みをする。

(あとでからかってやろう)

 いい弱みを得た。

「なんだか、嫌な予感がするぞ。ナイーブな時期なんだ、変な事はするなよ」
「変な事などいたしません。王は私が子供趣味とでもいう気ですか?」
「いや、そんな事を言う気はないが……」

 ふふ、ちょっとからかうだけだよ。そんな事を考えてると私の名前をキララ様が呼ぶ。

「クリエイト・クーシャネルラ」
「はっ!」
「貴方は自身を英雄と思ってるようですね」
「えっと……」

 どうしようか……いつもなら「はい!」っといってしまうが、ここがそんなに軽い場じゃないのは自分でわかってる。何をキララ様は聞きたいのだろうか? てかこの二人は現在まさしく英雄なんだけど……不遜と取られてる?

「私たちも貴方にはそれを求めてます」
「へ?」

 予想外な言葉だ。やはり私は英雄として選別されたのか!

「ですが、貴女には意識が足りません。目立てばいいという物ではないのです」
「それは……はい、申し訳ありません」

 これは遠回しに先日の無断戦闘のお説教じゃん! 

「もっとあなたは学ぶ必要があります」
「これ以上の勉強はご勘弁を! ちゃんと命令に従いますので!」

 私は頭を床にこすりつけて懇願する。これ以上勉強をさせられてゼロに乗れないのはつらすぎる。すると二人は私の行動になんか呆れてる?

「そういう事ではありません。もっと見識を広めてほしいのです」
「見識……ですか?」
「ええ、なのでクリエイト・クーシャネルラ、貴女にはエデンへの出講を命じます。この世の悪……ではなく天上の花をその目で見て自分の愚かしさを知りなさい」
「はぁ……はは!」

 気の抜けた返事をしたらにらまれたからごつごつと頭をぶつけて返事をしておいた。それにしても今悪って……いや、流石に気のせいか。そういう訳で私はエデンに行くことになった。

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