美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω23

 攻防を繰り返す。払って突いて薙ぐ。けど届かない。小清水亜子は昔は全然だと思ってたし、軍に入る直前くらいまでそこまでじゃなかった。けどこの小清水亜子は違う。私の剣をそこまで大きくもない銃で器用に弾く。最初は一丁だった銃を今はもう一つ取り出させる事は出来た。

 そしてそれをよく手でクルクル回してるのは癖なのか? そんな無駄な事をしてても強い……私はかなり強い筈だよ。だって軍内部の大会とかでも優勝とかしてる。人種は魔法とかもそこまで得意じゃないし、肉体だって他の種と比べると貧弱だ。

 けど人同士の戦いなら、それは同じで私は人種基準だと魔法も上手く扱える方だ。まあ強化だけ何だけどね。私は自身を強化する魔法が得意だ。それでちゃんと結果も出してる。私は学生時代よりも格段に強くなってる。なのに……小清水亜子はわたしの成長の更に先にいるみたい。
 
(本当に鉄血種になってるって事?)

 でもその割には銃で攻撃してくる。鉄血種ならその体の頑丈さでごり押し出来る筈だ。人種の剣なんて素手で止められる。でも小清水亜子のホログラムはそれをしない。出来るけどしないのか、銃で戦う事しか設定されてないのか……てかこのホログラムがどれだけ正確に小清水亜子を再現してるのだろう? 

 わからない……わからないけど、そんなのどうでもいいくらいに楽しい。私はペロッと舌で垂れてきた汗を舐める。そろそろ掛かるでしょ。私は両手で振り回してた剣から片手を外して、拳に魔力を纏わせて左手で殴る。剣でしか攻撃が来ないと思ってる所に拳を乗せてるとよく当たる。

 事実今小清水亜子の右ほおに私の拳が……

「やるじゃん!」

 入ったと思ったが、ちゃんと防がれてた。よく見てる……てかよく見えすぎてる気がする。避けるのが上手い。私は身体強化で人種の限界スピードに達っしてる筈だ。それに対して小清水亜子は通常状態にみえる。訓練の為の装置なんだから魔法とかを使ってもわかりやすい様になってるのにそれか見えないからね。

(いや、ハステーラ・ぺラスがそれに当たるのかな?)

 ハステーラ・ぺラスって実は何なのかよくわかってないみたいなんだよね。力……であることはそうだけど、その根源がなんなのかわかってない。マナ……なのかなんのか。でも鉄血種の力の元はハステーラ・ぺラスだといわれてる。なら、既に小清水亜子は私と同じように自身を強化してるとみていいのかも。

 そんな事を考えてると銃口がこちらを向く。私は素早く最小限の動きでかわそうと流れを見極める。けどそれが失敗だった。今までは普通に光弾が発射されてた。けど今回は違った。ホルスターには何かのカードが入ってる。

「しまっ!?」

 引き金を引いて放たれたのは拘束力のあるネットだった。この至近距離では避けれない範囲を覆ってる。ネットは私に絡みつき行動を著しく阻害する。そしてこつん――と悠然と銃口を頭に突き付けられた。ここで訓練は終わった。

「負けた……」

 私は床に手を付き這いつくばって悔しがる。だって本当に悔しいんだもん。消えゆく小清水亜子は私なんか見ちゃいない(当たり前だけど)。でも私は勝手に宣言するよ。

「次は勝つ!」

 それから私の日課に勉強と共に小清水亜子の打倒が加わった。

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く