美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω4

 私の視界は光が流れていって染まってる。ラーゼ達に見送られて、私はゼロと共に時空間を超えている。この空間は時間と空間が入り乱れてる。下手に操作して陣の定めた流れから外れたら、今度はどんな世界へと行くか分からないから、私は操縦桿から手を放してる。

 流石にここで好奇心に負けて更に異世界に行く気にはならないよ。今度は戻れるかなんか分からないし、そもそもこれも、成功するかは実はわからない。エデンのいた人たちのチートな技術で知識を信頼してるが……世界を渡るなんて飛行機で外国に行くのとはわけが違うからね。

 しかも私は時空間を渡ってるんだ。この意味が分かるだろうか? それはつまり、私は私が消えた三年前に戻るつもりなのだ。時空間を渡れば、それが出来る……らしい。だってそれが一番いいはずだもん。私が消えてきっと家族は心配しただろう。三年という月日は……出来れば無い方がいい。

 私の成長は……どうにもできないかもしれないけど……いや、いちおうそこら辺もどうにか出来る陣を組み込んでくれてる筈――だけど、それはちゃんと発動するかわからない。

 でも発動しなかったとしても多分大丈夫。三年分サバを読む事になるけど、そのくらいは……ね。

『お別れですね』

 ふとそんな声が響く。それはこのアンティカ、ゼロの声だ。私の一番の相棒。

「ありがとう……ごめんね」
『どうして謝るのですか?』
「だって、もう乗ってあげれないし」

 私はこんなにも寂しいのに、ゼロは違うのだろうか? やっぱりAIにはそんな感情はないのかな? 寂しい限りだ。

「もう候補はいるんだよね?」
『はい、優秀な方になるようですよ』
「まるで私が優秀じゃなかったみたいね」

 確かに! 確かにその自覚はあるけど!! 

『ですが、数々の機能がその方には使えません』
「え?」
『私の力を最大限に引き出せるのは貴女だけでした』
「ゼロ……うん、知ってる」

 それは自信をもっていえるよ。私とゼロがアンティカでは最強なのだ! 

「だからごめんだよ」
『いいんです。目的を達してください。二人で一緒にミッションコンプリートをするのが好きでした。それが私の存在理由ですから』
「ゼロ……うん、ありがとう」
『つきます。時空間の安定を確認しました』

 そういうと更に光が流れる量が多くなり、あたりを白で染める。そしてパリーンという音と共に、ゼロが時空間の壁を破った。

「え?」

 そこはまさに見知った光景だった。地面には車が走り、電線が張り巡らされていて、そして文明を感じるビルが建ってて、そして電車が進んでる。まさに私の世界、ここは日本だろう。けど……さ。

(めっちゃ見られてますけど!?)

 今が何年とかそんな事は些細な事じゃない? 私、もっと隠れていくのかと思ってたよ!! 大注目集めてる。それはそうだろう。だっていきなり空に展開した巨大な魔法陣から、ロボットが姿を現したんだ。大注目浴びない訳ない。

 これはもう明日の朝刊とか待つ事無く、号外ものだ。

『それではここでお別れですね。さようなら――亜子』
「ちょっ!? ゼロ!」

 私はまだ心の準備が出来てない。けど背中側のハッチが開いて、私を魔法の幕が包む。すると体が勝手に浮く。そして強制的に搬出された。それと同時に、ゼロの姿が光が流れる様に消えていく。

「ゼロ!!」

 私は腕を伸ばす。振り返ったゼロが、何やら頷いた。私も頷いて最後に「元気でね!!」とか言いたかった。けどそんな状況じゃないよね!? 助けてほしい! これでどこかに転移されたらまだほとぼりが冷めるまで隠れるとか正体がばれない様にするとかできた。

 けど私を包む膜は真下に降りていくしかしない。既に私の真下には多数の人だかりができてる。そして私が降りて来るのにどよめいて空間を開けてく。

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ――――どうしろうっていうのよおおおおお!!)

 私はそんな思いをすべてのみこんで、周囲で私を観察してる人達に一言「お騒がせしました」と言って逃げ出した。けど悲しいかな、確かに私は鍛えてたからそこらの女子高生よりも体力はある。でも今や私は人種なんだ。鉄血種の力があればここから逃げるなんて楽勝だった。
 でも私は人に戻ってる。興味に突き動かされた人たちをただの一女子高生が振り切れるはずがない。どうやら私は……こっちでも平穏無事な生活……とはしばらく無縁そうです。

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