美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

閑話3

 日が昇ったと思ったら落ちていた。何を言ってるのわからないと思うが、僕もわからない。隣では生肌を出して優しい寝息を立ててるティルがいる。

「やってしまった」

 そう思う。いやこれが初めてでもないし……いまさらだ。いまさらだが、何度でも思う。ティルの事は大切にすると誓ってる。何もなくした僕について来て支えてくれた人だ。不幸にしてはいけない。だからこそ、安易に手を出さないと決めていた。

 だけど、僕は……弱い奴だ。あの地をラーゼに奪われた後、大変だった。あの地でアルス・パレスが修復するのを待つ間、生き残った者達でオウラムへの通信手段を得る為にシズルスの示した場所へと向かった時も大変だった。張り詰めた緊張……見知らぬ土地でのサバイバル。他種族の脅威……幸いラーゼの奴が大半の生物を吹き飛ばしてたが……そこに残ってたのは悲劇だ。

 すり減る心が日に日に感じれる中、温もりを維持できたのはティルのおかげだった。ティルが優しく受け入れてくれたから……僕はまたここに戻ってこれた。けど僕は最低な奴だ。だって……こうやってティルを大切にしたいと心から思ってるのに……誘われたらついついとその手の店に入ってしまう。

 出来たばかりの国だから、そこら辺の規制は緩いし……そもそも種というのは本能に忠実だ。強い種程、それほどそういう行為に興味をしめさなるが、ここの集まりは平均的な種たちだ。自分たちの種を絶やさないためにもそういう事に積極的になってる。

 しかも我らは敗残者たちが殆どだ。つなげる事に必死になってる。そしてすさんだ心。そんなのが重なると、そこらにある温もりに飛びつく物だ。いい訳だとわかってるが……

「ティルはきっとわかってるよな」

 あの地に行くまではそういう事は禁じてきた。勿論ティルにもそういう事はしなかった。けど、あれからたがが外れてしまった。大切だった人がいなくなってしまったのも影響してる。結局バッカスさんを復活させることはいまだ出来てない。

 あの人はそれほど口数が多い人ではなかった。どちからというと、言葉数は少なく、周囲から浮いてる感じの人だった。だけど、大きかったんだ。皆が頼りにしてた。支えだった。

「しっかりしなきゃなんだけどな」

 伸し掛かる物が重い。背負う覚悟は決めたが、その重さが変わる事はない。でもそんな重さを行為で忘れてる自分がいる。ティルじゃなくても……誰でも……ティルはそれを知ってても何もいわない。ずっと変わらずに傍にいて、そして求めれば開いてくれる。

 だからこそ罪悪感にさいなまれる。

「呪いだ……これは……」

 僕はそれをしてる時、ずっと思い浮かべてる奴がいる。そもそもこの抑えきれない様な性欲はあいつが原因だ。ライザップにいた時、確かに目を見張る程にあいつは美しかったが、幼かった。だが今は女性的になってきてた。確かにまだ少女だ。だが、それでも女を感じる程だった。

 敵だと……いいきかせてはいるが、だからこそ、あいつを蹂躙したい獣人の本能がある。抑えきれない本能がある。だからこそ……僕は、ティルに謝るしかない。けどきっとまた僕は彼女を抱くんだろう。あいつの代わりに。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品