美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√73

 私たちのライブは始まった。いきなりのゲリラライブで最初は皆困惑してた。けどそれはほんの三十秒ほどだ。音楽がどこからともなく聞こえてきたら、それは私たちだってファイラルの住民は知ってる。そして皆私たちがちょっと間ファイラルを離れてたのもしってたはずだ。

 それなのに、いきなり聞こえてきた音楽。それで察するには十分。皆は私たちが凱旋ライブを始めたんだと理解すると、自分たちの応援グッズを持ち出して外に出たり、窓から顔を出したりして手を振ってくれる。流石本拠地のファイラルの住民たち。

 訓練されてるね。そんな彼らにこたえる様に私たちもいつも以上に気合を入れて歌うよ。空にエデンが鎮座してるから今回のライブは今まででは出来なかった演出が出来る。あっ、ちなみにエデンは見えない様に魔法で隠してある。そして代わりに演出は飛空艇でやってますって言う体を出す為に私たちが使った飛空艇を飛ばしてる。

 これには魔族をだます意味もある。奴らにはまだエデンの存在は隠しておきたいんだ。けどあいつらかなりの情報を持ってるみたいなんだよね。どうやら私が世界の理を書き換えた事を知ってたようだし……どこにやつらの情報源があるかわからないから、隠す意味はないのかもしれない。

 けど、わざわざ見せる必要もないでしょう。だからエデンは隠してる。エデンのおかげで私たちの映像がとても大きく、そして鮮明に空に映し出せてる。更に声もいつもよりもクリアな筈だ。皆に鮮明に見えるって事は手抜きなんてできない。

 エデンのおかげで私たちの汗までキラキラ見える事だろう。まあ私の場合は汗だって煌めいてて当然だけどね。アナハイムの熱気が大地を揺らすかのように揺れている。それは皆が持つ光を放つアイテム揺れてるからそう見えるだけだけど、けどそれだけじゃない。

 皆の熱気に……熱くなる気持ちにマナが反応してる。私にはそれがみえる。普通は人種のマナなんて特殊な、それこそアナハみたいに魔眼を持ってないと見えないものだ。それだけ人種の魔法も使えないような人たちのマナはか弱い。

 けどそれがどうだろう。今はそのマナが見える。輝いてる。最高潮の興奮にマナが反応してるんだ。私たちは続けて二曲を歌ったが、まだやめる気はない。

「まだまだ行くよーーー!!」

 そんな声を上げると新たな曲が空に響く。それと共に空の色がカラフル変わり、都市の姿も何やら甘いお菓子の様にかわる。これはエデンの力で皆の脳にそう錯覚させてるのだ。演出だよ演出。ほら、私たちって愛らしいじゃん。だからそれにふさわしくね。

 そしてそろそろこの衣装の本気を解放してもいいかもしれない。サビに入ると同時に、私のたちの体が発光するように演出して、そして次の瞬間、可愛いポーズと共に衣装が輝いて登場だ。オーディエンスからの感嘆の声や、奇声が聞こえてた。

 そう、興奮するんだよ皆。皆の興奮が最高潮のその先の臨界点を突破すれば、洗脳なんて物は自然と解ける。なぜなら、脳を制御できなくなるからだ。ハイ過ぎてね。どう、これってとっても簡単な私なりのやり方じゃない? 勿論この体や容姿を使えば他人をハイにさせるなんて簡単だ。

 けどそれを一度に大多数の人達にやるにはこれがきっと一番効率的。昇れ昇れ興奮のマナ、そしてクリスタルウッドに潜入してる奴を逆に染め替えしてあげようじゃない!

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