美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√27

「何!?」

 駆けこんできた騎士の報告に私は大きくうろたえる。いや、王妃様襲撃の時の民衆の暴徒化……あの時からこう候補としてはあった。それに今回国軍に混ざって魔物が確認されてる。国軍が魔物を使役する術を持ってるなど聞いたことはない。

 このファイラル領にはネジマキ博士というこの国最高の科学者がいるんだ。そういう情報があるなら、彼が知らない筈がない。それに魔物を使役出来るのなら、人種だけで無謀な戦いを挑む必要なんてない。アンティカだって……けどそうじゃないからアンティカに頼ってたんだ。

 つまりは国軍の周りで侍ってるモンスターは人が支配してるわけじゃない。そうなると……

「やはりアレか……」

 禿た頭を掻きむしる。禿てるからほぼ抵抗なんてない。頭に浮かんでたのはさっき王と共にいた見知らぬ男。あんな貴族は知らない。多分あれは魔族だったのだろう。だがそれだけではクリスタルウッドの所で起きてる異変や、王妃様の件も説明できない。

「こちらにも入り込んでるか」

 考えられるのは難民に紛れて――といったところだろう。ファイラル領では出自、や出産、色々と領民に関しては戸籍を作って管理しようと試みてるが、他領はそんな事はない。農民とかにまでそんな労力を割くことが勿体ないと考えてる。

 調べても意味なんてないから、直ぐに受け入れた。魔族が入り込むのなら絶好のチャンスだった筈。

「それでクリスタルウッドはどうなってる?」
「は! 避難していた住民たちが直立不動に立ち、何やら呪文らしき謎の言葉を発しています」
「何かの儀式? 強制的に移動させるとかは?」
「は! どうやら近づくとその者もの同じようになってしまうようです」
「それは……」

 厄介な。下手に兵を送りこともできないということか……

「クリスタルウッドに変化は?」
「今の所見られません。ですが、研究班の言葉ではマナが薄まってきてるということです」
「薄まる……」

 その言葉を発した時、騎士の視線が自分の頭を向いた気がしたが、多分気のせいだろう。今は非常事態だ。騎士である人々を守る為に命を張る事を選んだものがこんな時にハゲをみるなんて……

「首謀者はわかったのですか?」
「いえ、遠目からには妖しい者は……」

 魔族なら見た目で判別できるが、難民に紛れてきたのなら、その姿は限りなく人に近い偽装が出来るのだろう。なら、向こうが完全にこちらの手が手遅れとならないと姿は見せないか……マナ生命体なら、影響なんて受けずに民衆を移動できたかもしれないが……ないものをねがっても仕方ない。

「アレを使うか……」

 私はそういって通信を一つの部署につなげる。まだ実験段階だが、あれならば儀式に加わったりはたぶんしない。それにその時は強制的に壊す事だって出来る。通信先の奴は二つ返事で了承してくれた。さてこれで向こうの出方をうかがおう。

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