美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√10

 集まってる誰かが言った。

「見ろ! 来たぞ!」

 その言葉で自分たちも空を探した。すると雲の中に――そこからなにかが出てきてるのが見えた。白銀に塗られた外装が太陽の光を反射して眩しい。そして何よりも一番に思ったのはあれは……

「船だ」

 自分はそんな感想が真っ先に出てきた。その形はまさに自分が知ってる船に似てた。前々から聞いてた飛空艇のイメージはまさにあれだ。まああんな豪華な感じではないが、王族の乗ってる飛空艇となれば、あんな風になるのも納得できる。
 この国の旗もいくつもはためいてるし、まさにロイヤルの船という感じが漂ってる。白銀に要所要所では金が光ってるし……まさに自分では想像もできない様な額のお金であれは出来てるんだろうというのが想像できる。中もそれ相応にきっと豪華絢爛なんだろう。けど自分の貧困なイメージでは昨日乗った飛空艇くらいの想像が限界だった。
 あれをどこもかしこも金ぴかにしたくらいの想像しかできない。だって自分的には昨日の船で十分というか、信じれないくらいに豪華だったんだ。だからあれを超える物をいきなり想像してみようとしても……むりがある。

「なんか野暮ったいね。昨日のの方がカッコいいっていうか、そんな感じ」
「おい」

 セイの奴はなんて事を言いやがるのか。もしもあの中の人達に聞かれたら不敬罪に取られそうな発言だ。まあ相手は空の上だし、問題なんてないだろうが……それに確かに事実、昨日想像と全く違う飛空艇を見てたからそこまでの衝撃がある訳じゃない。
 まあ普段は水に浮いてる筈の物が空を飛んでるってのは凄い違和感を感じるがそれだけだ。けど昨日見た……というか、乗った飛空艇は「なんだこれ?」って思う形してた。まるで鳥の様な姿だったし、けど羽をはためかせるわけでもなく、凄いスピードで飛んでた。
 あれは確実に鳥よりも早かった。けど今見えるあの船はどうか……実をいうととてもゆっくりだ。近くを飛んでる鳥が追い越す程にはゆっくりだった。

 本当はもっとスピードでるのかもだし、アナハイムに降りる為にスピードを落としてるのかもしれないが、けどそれでも昨日の船よりもあの図体デカいのが速いとは思えない。あの形は結局、船であって空を飛ぶための形じゃないんだろうなって……そして昨日のあの飛空艇こそが、大地から解き放たれた本当の空を飛ぶための形なんじゃないかと……

 (って事は、自分たちはあの王族の乗ってる船よりも凄い物に乗ったんじゃ?)

 そう考えるとなんか戦々恐々としてきた。だって王族だろ? 実際昨日見た格好いいので来ると思ってた。けど蓋を開けてみれば、想像通りに船が空を飛んでるだけ……

「なんで鳥みたいなので来ないんだろうな?」

 そんな自分のつぶやきが聞こえたのか、近くの人が教えてくれた。

「あんたら、この領の飛空艇をみたのかい? まあアレはまだこの領くらいでしか使われてないからな。仕方ねーよ。この領で独自に開発した新型だかなあれは」
「なるほど……ありがとうございます」
「ははっいいって事よ。だがあの飛空艇も凄いぜ。あれは絶対に堕ちないって言われてるんだ」
「え? 飛空艇って落ちるんですか?」

 衝撃の事実だ。あんな凄い物が堕ちる? 信じられない。

「そりゃそうだ。飛空艇だって落ちる時は落ちる。あれだけのもんだ。繊細なんだよ。けど、あれにはたっぷりと魔法的な事やらしてあるからな。流石王族専用機だよ」
「なんか詳しいですね」
「まあ……な」

 そういって頬をぽりぽりとかくその人。その瞳は何やら燃えてるみたいだった。するとその人がこういった。

「おっ、パレードが始まるぞ」

 その言葉の後に飛空艇に続く光の道がアナハイムの上空に現れた。そしてその周りに光がきらめいたりしてる。どこかからか壮大な音楽が流れてきて、更にアナハイムからも何かが飛び立つ。あれは人? 人が何かに乗って飛んでる。その後ろから雲伸ばして空を彩っていく。

 凄い……こんなのいままで見たことない。自分たちはそんな幻想的な雰囲気に浸った。けど結局王妃様を拝むことは出来なかった。

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