美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
√3
――時は少し遡ってラーゼたちが約束の地へと出発した少し後――
「行ってしまわれましたか」
「まあ、ラーゼは大丈夫でしょう。こちらはラーゼの為にこの領を維持しておくことにしましょう。やる事は山積みですしね」
私の言葉にアンサンブルバルン殿がそういってくる。彼も本当はラーゼ様と共に居たいだろうに……それに戦えない戦場では役立たずの私と違って彼は歴戦の勇士だ。戦力になれる。だからその悔しさは私の比では無い筈。だがこの領の運営のためには彼は必要不可欠。だから今回は残ってもらった。
最近、魔物は活性化し、種族間抗争も増している。三つの星の影響もある。ファイラルや他の国の端の方の領は凶暴化した魔物や自我を失った種の対応でてんてこ舞い。つい先日もそんな領の一つが落ちた。そうなると負担は増える。難民も増える。
トップであるラーゼ様がいない間に領を守るのが我らの役目。プリムローズも全員行ってしまったのは痛い。彼女達は領民のアイドルであり、心の支え……希望ともいえる存在だ。ファイラル領では三つの都市を巡る様にしてプリムローズはライブをしていた。
それがしばらく休止になると領民の不安のはけ口がどこかに必要になる。
「それでは私は行きます。グルダフも行ってしまったので荒事はこちらで一手に引き受けることになりそうですね」
「すみません。お願いします」
「適材適所ですよ。そちらもそれ以上ハゲ無いように頑張ってください」
「善処します」
アンサンブルバルン殿はすぐさま影に何やら支持を送っている。影とは彼お抱えの黒い事をする部隊だ。体を透明にする術を持ち、暗殺やら情報収集に長けた集団だ。彼らほど、この国の情報を握ってるものはいないだろう。
彼の部下は有能な者たちばかりだ。頼もしい反面、怖くもある。なにせ私はただの人種。彼らがその気になれば、一瞬で命を奪われる存在だ。
まあだが、それはありえない。彼らの心はラーゼ様が縛っている。
「それは私も同じか……」
あんな年の離れた娘に……と自分でも思うし、分不相応なのは十分承知。だが、どんな規律や法律、それに常識なんかのこの世の理全てが、あの方の前では無力。それだけの存在だ。
「とりあえず他の領のアイドルを呼ぶか?」
それならプリムローズが出来ないライブの代わりにはなる。
「それはどうでしょう?」
「ぬわ!? いつの間に?」
いつの間にか私の傍には私の秘書官の部下がいた。仕事は出来るがどこか私をバカにしてる態度がある奴だ。そんな彼女がなんの気配も感じさせずに傍にいた。さっきまでいなかったはずだか? 彼女は普通の人種の筈だよな?
「私はハゲ様のおそばに控えてサポートするのが役目なので、いつだってまあいますよ」
なんかちょっと不服そうな気がするのは気のせいか? 確かにハゲの相手なんて嫌だろうが……そこは隠してほしい。
「それで、どう……とは?」
私は気を取り直してさっきの事を聞く。彼女はこんなんでもそれなりに優秀だ。
「別のアイドルを呼ぶということです。確かに他の領でならいいですが、ここファイラル領では不味いかと。なにせ領民の八十五パーセントはプリムローズの誰かのファンで百パーセントラーゼ様を信奉しています。なのでこの領ではプリムローズが絶対です。
イベントとかで招くならともかく、単独ライブでは誰も来ませんよ。寧ろハゲ様は反感を買うでしょう。ハゲブーイングが都市中で巻き起こりまね」
「そこまでか!?」
「そこまでです」
言い切りやがった。くっ、でも想像に難くないところがあるのも事実。別の領のアイドルを呼ぶのはダメか……
「ハゲ様、それとご連絡が」
「なんだ?」
「王妃様たちがご来訪なされるようです」
「そうか……ってなに!?」
なんでこのタイミングで王妃様達がここに? ファイラル領は今危ないし、王妃様はラーゼ様の事をあまり快く思ってなかった筈。いやだから、ラーゼ様が確実にいない今なのかもしれない。だが王族が来るとなると……色々と厄介だ。準備とか準備とか準備とか……それに何かあったの時の責任は全部こっちにくるだろうし……なにもなくても王妃様なら嫌がらせをしかねない
ヤバイ、どんどん頭髪が減っていきそうだ。私は大きく息を吐いて隣の彼女の肩をたたく。
「王妃様の件は任せた」
「一秘書官にそこまでの権限はないのでお断りします」
めっちゃはっきりと良い笑顔で断られた。上司の命令なのに……どこかに上司の命令ならうんうんと素直に聞いてくれる部下はいないだろうか? 今なら破格の給料で雇うのに……でもそんな都合のいい存在はいない。なので私は疲れたため息を吐きつつ歩き出した。
仕事は勝手に溜まる事はあっても勝手になくなったりはしないんだ。
「行ってしまわれましたか」
「まあ、ラーゼは大丈夫でしょう。こちらはラーゼの為にこの領を維持しておくことにしましょう。やる事は山積みですしね」
私の言葉にアンサンブルバルン殿がそういってくる。彼も本当はラーゼ様と共に居たいだろうに……それに戦えない戦場では役立たずの私と違って彼は歴戦の勇士だ。戦力になれる。だからその悔しさは私の比では無い筈。だがこの領の運営のためには彼は必要不可欠。だから今回は残ってもらった。
最近、魔物は活性化し、種族間抗争も増している。三つの星の影響もある。ファイラルや他の国の端の方の領は凶暴化した魔物や自我を失った種の対応でてんてこ舞い。つい先日もそんな領の一つが落ちた。そうなると負担は増える。難民も増える。
トップであるラーゼ様がいない間に領を守るのが我らの役目。プリムローズも全員行ってしまったのは痛い。彼女達は領民のアイドルであり、心の支え……希望ともいえる存在だ。ファイラル領では三つの都市を巡る様にしてプリムローズはライブをしていた。
それがしばらく休止になると領民の不安のはけ口がどこかに必要になる。
「それでは私は行きます。グルダフも行ってしまったので荒事はこちらで一手に引き受けることになりそうですね」
「すみません。お願いします」
「適材適所ですよ。そちらもそれ以上ハゲ無いように頑張ってください」
「善処します」
アンサンブルバルン殿はすぐさま影に何やら支持を送っている。影とは彼お抱えの黒い事をする部隊だ。体を透明にする術を持ち、暗殺やら情報収集に長けた集団だ。彼らほど、この国の情報を握ってるものはいないだろう。
彼の部下は有能な者たちばかりだ。頼もしい反面、怖くもある。なにせ私はただの人種。彼らがその気になれば、一瞬で命を奪われる存在だ。
まあだが、それはありえない。彼らの心はラーゼ様が縛っている。
「それは私も同じか……」
あんな年の離れた娘に……と自分でも思うし、分不相応なのは十分承知。だが、どんな規律や法律、それに常識なんかのこの世の理全てが、あの方の前では無力。それだけの存在だ。
「とりあえず他の領のアイドルを呼ぶか?」
それならプリムローズが出来ないライブの代わりにはなる。
「それはどうでしょう?」
「ぬわ!? いつの間に?」
いつの間にか私の傍には私の秘書官の部下がいた。仕事は出来るがどこか私をバカにしてる態度がある奴だ。そんな彼女がなんの気配も感じさせずに傍にいた。さっきまでいなかったはずだか? 彼女は普通の人種の筈だよな?
「私はハゲ様のおそばに控えてサポートするのが役目なので、いつだってまあいますよ」
なんかちょっと不服そうな気がするのは気のせいか? 確かにハゲの相手なんて嫌だろうが……そこは隠してほしい。
「それで、どう……とは?」
私は気を取り直してさっきの事を聞く。彼女はこんなんでもそれなりに優秀だ。
「別のアイドルを呼ぶということです。確かに他の領でならいいですが、ここファイラル領では不味いかと。なにせ領民の八十五パーセントはプリムローズの誰かのファンで百パーセントラーゼ様を信奉しています。なのでこの領ではプリムローズが絶対です。
イベントとかで招くならともかく、単独ライブでは誰も来ませんよ。寧ろハゲ様は反感を買うでしょう。ハゲブーイングが都市中で巻き起こりまね」
「そこまでか!?」
「そこまでです」
言い切りやがった。くっ、でも想像に難くないところがあるのも事実。別の領のアイドルを呼ぶのはダメか……
「ハゲ様、それとご連絡が」
「なんだ?」
「王妃様たちがご来訪なされるようです」
「そうか……ってなに!?」
なんでこのタイミングで王妃様達がここに? ファイラル領は今危ないし、王妃様はラーゼ様の事をあまり快く思ってなかった筈。いやだから、ラーゼ様が確実にいない今なのかもしれない。だが王族が来るとなると……色々と厄介だ。準備とか準備とか準備とか……それに何かあったの時の責任は全部こっちにくるだろうし……なにもなくても王妃様なら嫌がらせをしかねない
ヤバイ、どんどん頭髪が減っていきそうだ。私は大きく息を吐いて隣の彼女の肩をたたく。
「王妃様の件は任せた」
「一秘書官にそこまでの権限はないのでお断りします」
めっちゃはっきりと良い笑顔で断られた。上司の命令なのに……どこかに上司の命令ならうんうんと素直に聞いてくれる部下はいないだろうか? 今なら破格の給料で雇うのに……でもそんな都合のいい存在はいない。なので私は疲れたため息を吐きつつ歩き出した。
仕事は勝手に溜まる事はあっても勝手になくなったりはしないんだ。
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