美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

√2

「どういうこと? 流石に気が狂わない限りそんな事ないと思うけど? 確かなの?」

 私は艦長の言葉を噛み締めて咀嚼してそして冷静にそう聞き返す。だって……ねえ。

『事実の様です。ファイラル領には全域での戦闘態勢の警戒警報が出てるとか』
「……なにがあったか聞きたい所だけど」

 だって国が攻め入ってきたんだよ? それって私たちを逆賊だと認定したって事だよね? こっちには国所属の奴らだって……私は新たに付けたピアスに触れる。船から既に新しいピアスを皆に支給してるから、こっちでも連絡は取れる。

 こっちは声しか飛ばせないが、十分だ。

『亜子、あんた達裏切った?」
『はい? なんの事?』

 亜子の反応は「何言ってんだこいつ?」的な普通なものだ。亜子たちは知らないのだろうか?

『国軍の奴らはどうしてる?』

 亜子は異世界人って事でそこまで信用されてないかもしれない。けど一緒についてきた国軍の奴らは精鋭だった筈。あいつらはこの機に動き出しててもおかしくない。

『どうって……宴会してるけど?』
『…………あっそ』

 私はなんだか悲しくなった。あいつらは国から見捨てられたんだろうか? けど戦力は少しでも欲しい筈。更には敵の大将の近くに精鋭を置いてるなんてのはそうそうないチャンスのだと思う。それを活用しないって変じゃない? 
 ただ単に連絡が取れないだけだろうか? それはある……けど、私たちがそれなりの兵力を伴って約束の地へと行くのは国側は知ってたわけだから、今動いたんだよね? それなら私たちが動く前に既にその計画はあったはず。
 てかそうじゃないとおかしい。だって軍なんてのはそう簡単に動かせるものではないからだ。私は簡単に一声で案外動かしてるけど、その下の蛇やハゲがいつだって大変そうにしてるもん。だからきっとそうとう前から準備してた筈。
 あの国王……たぬきだったのか? いつも私にデレデレしてたけど……流石は一国の王だったの? うーん今でもそうとは思えない。事実、ここにいる国軍の奴らは動いてないし……計画的なら、あいつらを使わないのはおかしいもん。

『どうなさいますかラーゼ様』

 私は艦長のその言葉に短く帰す。

「今すぐファイラルへと舵を切る。エデンと共に凱旋と行こうじゃない」

 私は椅子に深く背中を預けてそういうよ。だって、別段焦る事でもないんだもん。人種の兵力はよくわかってる。ハッキリ言って今、ファイラルを切るなんて愚策もいいところだ。あの王が狸だったのかどうかはどうでもい。ただ、私は領主として領民を守ろうじゃない。
 国と私、どっちの価値が高いか、ハッキリさせてあげよう。

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