美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ169

「バッガスさあああああああああん!」

 エデンから切り離されたアルス・パレスからそんな声がとどろいた。どうやらラジエルの奴は魂をアンティカと肉体で行き来できるよう。それなら今まさにアルス・パレスを操ってるアンティカを操ってのは誰なのか……私は実態を持たない羽根つきの老人を見る。

「どうやら我らが作ったこの地の管理プログラムが自我を持ってしまったようですな」
「アルス・パレス支配されちゃってるけど、どうするのよ?」
「ふむ……アルス・パレスがあれのホームみたいな物でしたから色々と仕込まれていたようですな」

 冷静にそんな事を言ってるが、アルス・パレスはその間にもどんどん地上に向けて降下してる。折角私の物になったのに奪われるとはカチンとくる。それにバランス的に美しくないし……わたしは醜い物よりも美しい物が好きだよ。

「で?」

 私が静かな怒りを込めてそう羽持ちに言う。すると老人は余裕を持ってた態度を崩して焦ったように言うよ。

「はっ! ただいま、システムによって奪還を試みてますが、向こうもこちらが生み出したシステム。手の内を知り合ってる同士のやり合いですからこのままでは……」
「逃げられると」

 そこで黙ってしまったということは肯定を意味してるってことだよね。逃げられるのは嫌だなー。

「壊そうか?」
「はい?」

 私のポツリとした呟きに呆けた顔を返す羽持ち老人。流石に耳が遠くなる年か。てか、こいつら別に肉体の機能で聴いたり喋ったりしてる訳じゃないよね? まあいいや。

「アルス・パレスは復元できないの?」
「それ相応の時間はかかりますが、復旧は可能かと」
「そう、なら壊しましょう。このままラジエルに奪われるよりはマシよ」

 その私の言葉に控えてる羽持達が一瞬ざわめく。何かいいたそうだけど……行動をしないのなら私は聞かないよ。私は玉座で目を閉じる。すると頭にアルス・パレスの破壊方法が流れ込んでくる。

「命じる『ゴルデリア』を起動せよ」

 アルス・パレスは強力な守りがある。こっちもそれなりの攻撃じゃないと破壊できない。

「メデス様、それは地上にまで影響を与える可能性が――」
「何か問題でも?」

 私の場所でない所がどうなろうが別段気にしない。大丈夫大丈夫、星の生命力は大したものだよ。数百年もすればその場所も回復するだろう。今いる場所の命たちは、私がクリスタルウッドで世界に帰してあげればいいだけだ。
 
 それよりもラジエル達だ。あいつらにアルス・パレスなんて物騒な物をくれてやるほうが危険。島の四方に現れる巨大な白銀の塔。それから青白い雷がつながって、下方に収束する。そしてそれは光の速さで落ちていきアルス・パレスを貫く。

 それと同時に地上数キロが融解した。地上よりもやっぱりアルス・パレスのが耐久度たかいね。一撃では沈まないか。私は更に数発叩き込む。地上の地図を書き換えないといけない規模の攻撃でようやくアルス・パレスの大半が吹き飛んだ。

 けどそれでもどうやらラジエル達は生きてるみたい。まあだけど、あれでアルス・パレス自体は完全に破壊できたと思っていいだろう。ちょっと追い詰められた時もあったけど、私は約束の地を支配し、ラジエルはここへの介入方法を失った。

 あいつが進化を果たそうが、私はあいつの剣の届かないところにいればいいだけだ。戦いというのは前線に立つことだけじゃない。だから私はもう負けない。私は玉座で満足気にふんぞり返る。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品