美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ152

 マナが周囲に満ちていく。一斉に皆が雄叫びと共に駆け出したが、どんどんその足は鈍くなり、そしてついには倒れ伏す人たちが出てくる。けどそれでも僕たちは止まることはできない。止まった時が負ける時だ。ラーゼは飛んでもないマナを溢れさせてる。あれをそのまま爆発させることもできるだろう。

 一つの空間に過剰に集まったマナは崩壊を始める。そのエネルギーにあらがう術はない。けどここにはラーゼの仲間もいる。ただ爆発させることはしないはずだ。でもあいつは確か強大な力を使えば使うほど自滅してた。
 これだけの力だ、ただでは済まない筈。けどあいつは必ず自滅する訳でもないっ事もわかってる。まあそれはそうか。だってあいつは自分の事が好きだ。わざわざ自分から死にに行くような事をするような奴じゃない。

 次々と倒れていく同胞たち。最後まで行けるのはやはりセーファや姫、バッガスさんくらいか……精鋭たちを連れてきたが、このマナの濃さではな……そうおもってると繋がってた手から力が抜けていくのを感じた。

「ティル!」

 僕は倒れそうになってるティルを支える。僕はどうやら王の剣が守ってくれてるようだが、ティルは違う。これ以上はティルには辛いか……ぼくは優しくティルを床に寝かせる。

「ラジエル……様」
「待っててくれティル。必ず勝ってみせる!」

 そういって僕はティルの弱弱しくなってる手を強く握る。するとティルが少しだけ強く僕の手を握り返してくれる。

「信じてます」

 そういって笑ってくれるティル。僕は思わず彼女を抱きしめた。ティルはずっと僕を支え続けてくれている。どんな時も彼女は傍にいてくれた。だから彼女が信じてくれているのなら、僕は前に進める。これまでも……そしてこれからも……

 視線が自然とまじりあう。辛いのか、火照った頬は赤くすこし湿り気があり、息も少し荒い。繋いだ手から伝わってくる熱い気持ち。これは勘違いではないよな? ずっと、進まずにいたが……僕はティルをラーゼに渡したくはない。

 見つめ合ってると、ティルは目を閉じた。僕は少しずつ顔を寄せていき、そしてその整った唇に自分の唇を重ねる。体も魂もティルと共に溶け合うような……そんな満ち足りた瞬間だった。けどその時、空間に亀裂が走った。至る所にそれは走り、空間がとてもいびつなものになっていく。どうやら、キスがラーゼの逆鱗に触れたようだ。

 僕は唇を離し、ティルを寝かせる。そして走り出した。今の僕は誰にも負ける気がしない。横についたアンティカの手に乗り、ラーゼを目指す。計画通り……そう計画通りなんだよラーゼ! その神の如き力が必要なんだ!!

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