美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ151

「ちょ……」

 これ不味くない? 私は光る剣を手にしてるラジエルから距離をとろうと籠を動かす。とりあえず上昇させて奴の間合いから離れる。だってあいつは飛べないしこれが有効だろう。

「逃げかすか!!」

 そういって振りぬかれた剣。私は転がってそれをかわした。落ちそうになって必死に籠にしがみつく。なんてみっともない恰好だ。私は足をバタバタしてよじ登ろうとするけど、そのときバカってな感じで籠が割れた。どうやら今の一撃で籠が一刀両断されてたみたいだ。

「「「ラーゼ様!!」」」

 私はそういって下にきてくれたプリムローズの皆と共にプギャッてな声を出してキューブの上に落ちた。この程度の高さは私的にはどうって事ない。どうって事ないけど何となく焦っちゃうだけだ。けどそれは私だけであって皆は違う。
 皆は落ちたわけじゃなく、私を受け止めた立場だけど、一人の人間を受け止めるのって実はかなり危険だ。それが女の子ともなるとなおさら。コランとか小っちゃいし、私はすぐに下の皆を気遣う。

「大丈夫!?」
「えへへ、よかったです」

 そういって笑うコランは大丈夫そうだ。シシもフィリーもミラも……ってミラは大けが負ったばかりでしょうに……

「ミラ、貴女大丈夫なの?」
「へっちゃらです。傷は完璧に治りましたし、ラーゼ様を傷つける訳にはいきません」

 全くこの子は……ミラは自分が可愛い女の子だって自覚が足りないよね。自滅には世界の理は働かないんだよ? まあ今のは自滅なのかわからないけど……みんな無事なのは世界の理が守ってくれたからだろうか? 

「ラーゼ、仲間を巻き込みたくなかったら前へでろ」

 いきなり襲ってこずにそういうラジエル。流石ラジエルだね。不意打ちなんてマネはしないし、非戦闘員に見えるコラン達には手を出したくないと……立派じゃん。今の一撃を見る限り、どうやら今のあの剣は理を抜けるし、プリムローズの皆も安全じゃない。巻き込まないでくれるのならありがたい。

 私は立ち上がり、前に出る。けどその時、プリムローズの皆がさらに前に出て私を通せんぼする。

「ラーゼ様を虐めないで!!」

 そういうのはコランだ。そしてシシ達は紋章を解放する。皆、私のためにその命を捨てる気のようだ。けど……そんな事を許すことは出来ないよ。

「ラーゼ様! 何故ですか!!」

 三人が振り返ってそういう。驚いてるようだ。まあそうか……だって紋章への力の供給を止めたからね。力がなければ、多分ラジエルはプリムローズの皆には攻撃しないだろう。あいつはそういう甘ちゃんだからね。

「大丈夫だから、自分たちの籠に戻って結界をはって」
「でも!!」
「いいわね?」

 私は確固たる意志でそう告げる。それはファイラルの領主としての言葉だ。いつもは一人のメンバーとして接してる。けど、今のは違う。それをちゃんと彼女たちはわかってる。これは命令だと。そして私はさらに戦場全体に聞こえるようにいうよ。

「全軍下がりなさい。籠が造る結界のなかへ」

 無理矢理力をぶつけて告げたから興奮してる奴らにも伝わったでしょう。亜子は……まあ空間自体がどうにかなってるのなら大丈夫でしょう。多分。

「ラジエル、あんたもあんた以外下げた方がいいわよ?」
「優しいな。だが、皆やる気のようだ」

 そういうラジエルの背後にはオウラムの軍勢がいる。皆素早く下がってくれたようだ。なんだかんだ私が負けるなんて思ってないってことだね。正しいよそれは……ね。

「そう……じゃあ、皆……死になさい」

 もちろん理で守られてる奴ら以外ね。私は今までにないくらい、その身からマナを溢れさせる。

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