美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ122

「凄い……」

 全く違う陣はこれまでの陣とは重ねられる魔法の量が全く違ってた。それに淀みなく噛み合う陣にはロスが殆どないらしい。らしいというのは魔眼が教えてくれた知識を分析した結果である。どうやれば、この陣の同じことが出来るのか……魔眼を使えばなんとか再現できそうではある。
 今回はそこまで複雑な事をしようとしてるわけでもない。けど私は魔法自体を生み出そうとしてるといっても過言ではない。普通の魔法ではマナを集める第一段階を経たら、意思を伝えてその現象を発現させる第二段階とやって魔法は発現される。

 けど、今回は自分の色を載せる事はしては行けない。それに普通ではありえない大量のマナを誘導する事を念頭に置かないといけない訳で、それに耐えられる陣でないと……自分のマナで陣自体を強化して、けどその影響が他のマナに乗らない様に……

「うう……」

 沢山の要素を詰め込むことが出来る分、バランスが難しい。ある程度適当でも普通に動いてくれるくらいの性能があるみたいだが、今回動かそうとしてるマナは量が半端ないから……慎重に慎重を期したい。それにこんな純なマナなんて扱った事がないんだ。

 わずかでも陣から私の魔力が漏れてそれにそまれば、どんな影響が出るか……上手くキララを通してラーゼ様へと帰せなくなるかもしれない。マナが濃すぎてどんどんと視界が狭まってく。メル様達は静かに私の事を見守ってくれてる。
 運んで来たキララは私の直ぐ前で腕をぐったりしてる。

「くっ……」

 流石にマナが濃すぎて私の未熟な陣では限界が近づいてきてる気がする。

「ダメ……どうしても集める事と、示す事の両立が上手くいかない」

 集める事も出来る。マナに道を示す事も出来る。けどそれが合わさると齟齬が起きる。何も色を付けずに陣を回そうとしてるのがダメなのかもしれない。そもそも陣は術者の意思をマナに伝えるための物だ。マナに意思を伝えて奇跡を起こす――それが陣の役割な訳で、何も伝えずに陣を動かすというのが想定外なのかもしれない。

 汗が額から流れて頬を伝って顎からおちる。そろそろ限界を迎えそうだ。そうなったらマナの過負荷で大爆発が起きて……皆……

「ごめんなさい……キララ」

 私の初めての友達。不甲斐ない自分が情けなくて涙が出てくる。私は友達を救う事も出来ない。

『まだだ、まだ諦めるには早いぞ娘』
「え?」

 頭に響く声。それはとても雄大な声だ。見あげると、白く染まる空間にとても大きな影があった。いや、これは影ではない。マナだ。純とはまた違うマナ。それが集まって大きな形を成してる。

『我が手伝おう』

 そういってその何かは私の中途半端な陣に爪の先で触れる。その瞬間、陣の輝きが変わった。不揃いだった部分がはまってくような……そんな気がする。

『動かすのは貴様の役目だ』
「はい! これなら」

 私は意識を集中する。凄いと思った。粗がない。完璧だ。この陣の事を知ってる? いや、今はそれよりも早くマナを循環させないと。私は陣をキララの上で発動させる。ゆっくりと回る陣に次第にマナが集まってくる。そして次々と出てくるマナがその分だけキララの中へと導かれてく。キララの表情は苦しそうではない。

 多分キララとラーゼ様の間には私達と違うマナが通る太い道があるんだろう。だからこそ、キララは大量のマナを受け入れる事が出来るし、今はそれを逆に使ってラーゼ様から出てるマナをキララに通して戻してる。

 これでとりあえずは何とかなった筈だ。私はホッと一息をついた。

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