美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ98

「なんという事じゃ……」


 そう呟くのはロリッ子だ。しかもかなり深刻そうな表情してる。スナフスキンが種子によって創造したとみられるあの不格好な八岐大蛇は確かに強そうではある。絶望したくなる気持ちもわからなくはないが、ロリッ子はなかなかに強そうだと思ったんだけどな……


 そうそう心折れそうにない奴というか……見込み違いかな? それとも私が分かってないだけなのだろうか? けど私以外の皆も確かに驚いてたけど、絶望まではいってない。このくそ――ってな感じでどうやって倒すか、とりあえずちょっかい出してる段階だ。


 それはオウラム勢でも一緒だ。皆頑張ってる。カマキリとグルダフはなんか初めてとは思えない位に息合ってる。


「やるな獣人!!」
「そちらこそ!!」


 そんなお互いを認め合うような応酬してるよ。楽しそうで何より。


「姫……あれがなにか分かるのですか?」


 うさぎっ子がロリッ子を心配気に声を掛けてる。私もうさぎっ子に心配されたい……でもうさぎっ子は私が動こうとするときつく睨んでくるんだよね。いやいや、今は私に注視してる時じゃないでしょ。嬉しいけどさ。うさぎっ子はどんな危険より、私が危険と思ってるのか、皆が八岐大蛇に注目してる時もこっちを警戒してた。


 そんな警戒しても、私だってなんでもできる訳じゃないんだけどね。寧ろ私は出来ない事の方が多いくらいだ。だって楽を出来るのが上に立つメリットだからね。あくせく働くのは下の者達の役目であって、私の役目ではないのだ。


 だから私は大抵の事が出来なくても問題はない。そういう考え。だからうさぎっ子のその警戒はやるだけ無駄だ。神経すり減らすだけで老いが進みそうで辞めてもらいたい。だって可愛い子にはそのままでいてもらいたいじゃん。


 確かに老化で増す魅力もある。新鮮さとは違う熟した魅力という奴だ。それもありっちゃありだけど、うさぎっ子にはまだそんな所に行ってほしくない。今までの苦労が見て取れるくらいにはうさぎっ子にはちょっと見ただけで出てる肌部分に生傷が実はみえる。


 そんな目立つって程の物ではないが、綺麗だったころを私は知ってるからね。とりあえずラジエルの奴はぶん殴る。あいつちゃんと守れてないじゃん。


「あれ……自体はわからんよ。ただ、アレを成した事が問題じゃ」
「というと?」
「あれは召喚ではない。奴は、あの命を創造したのじゃ」
「そんな事が?」


 そういってようやくうさぎっ子が八岐大蛇に目を向ける。うさぎっ子もロリッ子が言わんとしてる事がわかったのだろう。


「命を詰む術は無数にある。じゃが、生み出す術は限られる。しかも奴はなんの贄もなしに、術式だけでアレを成した。それは最早、神の御業」
「スナフスキンはその領域に踏み入れてると?」


 確かに神と同じことが出来るとなるとヤバいが……二人が知らない事を私は知ってる。教えてもいいが……別段メリットないよね? 情報は無暗に流出させて良い物でもないし、ここで奴が神の領域に踏み入ってるからと言って、うさぎっ子達が退却するともおもえない。


(教えなくもいいか)


 私はそう結論づけた。てかそうこう考えてる間に結構戦線ボロボロだ。かなりのチートみたいだねあの八岐大蛇。ここはマナの供給を増やすか。まあ皆にはそれなりに負担になるが、短時間なら大幅なパワーアップになる。


 そう思ってると、声が届いた。


『ラーゼ様! 私達歌います!!』


 そういって来たのはプリムローズの皆だ。そういえば、あの特殊なマイクで星は境界を越えたんだよね。なら、何か特別な効果があるのかも? スナフスキンだけじゃなく、残りの二つの種にも何か作用する? 試す価値はあるよね。そもそもあのマイクの事も調査対象には入ってるし。
 ここで直にスナフスキンの反応が見れるのは良い機会かもしれない。


「歌おっか?」


 私はこの激しい戦場で場違いな呑気な声でそういった。きっとうさぎっ子とかはまたバカ言ってるとか思ってそうだが、聞いた後にはサインを求めたいと思えるようにしてあげよう。私の言葉にプリムローズの皆は気合の入った『はい!』を返してくれたし、プリムローズlive・イン約束の地の開幕だよ!

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く