美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ97

 ピシ――そんな音が私には確かに聞こえた。スナフスキンの奴が出した陣の一つについた傷。綻びと言ってもいいそれ……どうやらスナフスキン自身はそれに気付いてないみたい。てか普通は気づくものではないか。


 自身が常に構築してる陣ならともかく、奴の周囲にある陣はどうやら自立型みたいだからね。手を離したら後は勝手に動き続ける自立型の陣は手間がかからないけど、定期的に点検しないとね。まあこれは出したばかりだし、奴は自信もあるだろうからそんな事はしそうにないけど。


(そもそも、よく私気づいたな)


 それだね。なんかこうビビッと来た感じ。マナを感じたと言ってもいい。アナハが知らせてくれたのかもしれない。あいつが無事かどうかはわからないけど……がんばってくれてるって事にしておこう。だって私達の誰も陣には触れてない訳で……物理的にこっちから干渉なんてしてない。
 いや、出来てない。それなのにスナフスキンの陣にはほころびが出来た。それはどこかから予定外の干渉が起きたって事だ。それが今出来るのはアナハしかいない。


(私の声が届いたのかな?)


 声出してる時は、何言ってんだこいつ? 的な空気を周りから感じたが、私の言葉は無駄ではなかったって事だね。


「ふふふ」
「ラーゼ様! あれを!」


 私が得意気に笑ってると、グルダフが大きな声を出してきた。しょうがないからそっちを見ると、何やらいた。いや、それはほんと何やらなんだ。見た感じ、汚いドブ色してる。そしてそれは中空に浮いてうねうねしてた。


『さあ、食え』


 そういってスナフスキンの奴は手から出した陣をそのドブ色した何かに近づける。すると口が開いてムシャムシャと食べ始めた。すると陣を食ったからか、色が虹色になりだした。


『そうだな、これも加えてみるか』


 そういって更にいくつかの陣を食らわすスナフスキン。それに伴ってどんどんそれは巨大に、そして形を変えていく。


『孵化せよ』


 その言葉と共に、何かはその体を急速に縮めていく。どんどんと圧縮されて、しまいには豆粒みたいになった。けどその豆粒から発する光は強烈で目を開けてられない程。再び目を開けた時、そこには八又の頭を持った生物がいた。
 けどその頭は同じじゃない。蛇の様であったり、牛で会ったり、カエルみたいであったりと様々だ。はっきり言って気持ち悪い。


(完全にキメラじゃんこれ)


 種子とは、新たなる生物を生み出せるシステムの様な物なのだろうか? よくわからないけど、単純に厄介な相手が増えたって事だけは確実だ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品