美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ81

  ざわっ


「――――?」


 なんだろう……なにかむねがざわざわする。何かとてもヤな事が起こるような……そんな感じ。


「ねえキララ。なんかヤバ気しない?」
『何言ってるのよ。ここはどこでヤバいじゃない』


 まあ確かに。そのキララの言い分は別段間違っちゃない。けど、今私が言いたいのはそういう事じゃない。そう思ってると、キララと同じ籠に乗ってるアナハがこんなことをいう。


『マナが……逃げてる』
『どういう事アナハ?』
『わから……ない。けど、純粋なマナが逃げるなんて異常』


 それは私もアナハと同じ意見だ。純粋なマナに意思なんてない。そこにあるだけだ。マナは世界に満ちてるだけ。そこにあるだけ。なのにそのマナが意思をもった様に逃げる? 誰かが意思を通してるのか、それかマナさえも逃げ出す何かがあるのか。


 私の勘では今回のは後者の事の様に思える。


「とりあえず急いで下に行くわよ!」


 あの超巨大なアンティカが去った場所に道があった。多分あいつは守衛もしてたんじゃなかろうか? 私が神の器に入った神……かもしれない存在で、ここの奴らに後は任されたから、きっと通っても大丈夫だろう。


 特殊な魔法をくぐると、そこは水のトンネルだった。周りは水に満ちてるのに、私達が通ってる場所だけぽっかりとあいてる。それなりに広いからアンティカに乗ってる亜子もそのままついてきてる。本当ならゆっくりと鑑賞しながら歩きたいような場所。


 でも今はそんな場合ではない。私達は走ってこの水のトンネルを進んでる。まあ勿論私は籠の中だから、走っちゃいないけどね。後方がさ……なんかいよいよやばくなってきたんだよね。私達がここに入って少ししたくらいかな? 


 なんか後ろからマナ達が消えて行ってる感覚が伝わって来た。マナは還る物であってなくなる物じゃない。確かに一時的に希薄になったりするが、それは消えてるわけではない。時間を掛ければ元に戻る。けど、私が感じたのは消失だ。


(絶対やばい奴だ)


 そう思った。私達は籠に走ってた兵士達をのせて、亜子にもアンティカで運んでもらって今全速力で走ってる。まあそれでも乗れない奴は居た。しょうがないからそういう奴らには走ってもらうしかない。飛行ユニットがある奴らはそれでいいしね。


 とりあえず人種は籠やアンティカに優先的に乗せた。だって脆弱だし、他の種族よりも足遅いもん。足が速いやつらはもう頑張って貰うしかない。余裕がある私のような籠の中に居るのは後方の様子を伺う。どうやら、なんか崩壊してるみたいだ。


 物? 物質? それともこの空間そのもの? が塵芥となってる。何が起こってるのかはほんと全然わからないが、マジヤバいってだけはわかる。誰かが『バルス』って唱えた? とか思ったが、んな訳ないよね? 


 私達はこの現象がこの島全土に及ばない事を願うしかない。だってもしも島全体に広がるのなら、今のこの行動も全部無意味な事になってしまう。そう思ってると、いきなりガクンとなった。そしてゴロゴロと滅茶苦茶になる。一体何が起きてるっていうの!? なんか滑ってるような……ウォータスライダーにでもなってたのかな? 


 とりあえず私は吐き気だけ我慢することにした。だっていくら内部でごちゃまぜにされても私にはかすり傷一つつかないしね。けど、美少女がゲロを吐くなんてダメ。私のイメージ的にそれは許されないのだ。

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