美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
Δ63
空の色が変わった。それは数十分前の事でした。一筋の光が空に鎮座する三つの星の内の一つに放たれた後の事。突如、その星に表情が生まれてそしてそれは降りてきた。それは大きな大きな岩のような物。いくつもの岩が連なって四本の腕の様に見える。岩といったが、アレが岩なのかは正直わからない。だって紫を中心にとても不思議な色に煌めいてる。少なくとも、この世界では見たことがないようなものだ。
「ティル殿、あれは……」
「わかってます。あれは不味い物ですね」
私に警告を発してきたのはオウラム国の大隊長が一人『バッガス』さんだ。彼はカマキリ族の唯一の生き残りで旅の途中で私達と激戦を繰り広げたのちに仲間へとなってくれた古株の一人。彼はカマキリ族だけど、実をいうとその殻におさまってはいない。進化を果たした稀有な人だ。なので見た目は人に近いものになってる。筋骨隆々の体に、背中には羽があり、そして尻からは細長いカマキリの尻尾がある。腕は二本で普段は人種と変わらない形をしてるけど、戦闘になると、その腕の側面からは刃が出てくる。
その刃は刃こぼれすることはなく、いくら切っても切れ味が落ちる事もない。そして当然、切れない物はない。それに戦闘だけでなく、色々と気が利く人でもある。今は私の護衛もしててくれてる。いや、正確には私の護衛ではないけども、きっと一緒に守ってくれるだろう信頼感がある。
「どうですか姫?」
私はちょっと急くようにその方に声をかける。私の数メートル先には自身の体よりもかなり長い服を纏った九歳くらいの子がいる。その子は青い肌に髪と呼べるのかわからない、まるで貝の半分を頭に乗っけてるような感じの子だ。目鼻立ちはくっきりとしてる。まあだけど、その目とか鼻とか口に実は意味はない。だだ、私達が接しやすいようにそんな形をとってるだけ。だから瞬きもしないし、下手するとバランスがおかしくなってる時もある。
「なかなかに難儀であった。だが我にかかればこのくらい容易いのじゃ」
可愛らしい声でそういう彼女は褒めて褒めてと示してる。だから私は近づいて彼女の貝の部分を撫でてあげる。ひんやりと感触が肌に伝わってくる。
「それで道は?」
「うむ」
そういうと周囲を漂ってた優しい光が集まって同じ方向に流れてく。あれを辿れはいいのだろう。
「急ぎましょう。外に出てるとあの空の物に晒されます」
「そうじゃな。奴らめ、いよいよ本気になったのかもしれんの」
「お知り合いで?」
「昔の」
この人がいう昔はそれはもう数年とか数十年とかじゃない。それこそ、数千から万単位だ。
「絞り尽くしたと思っておったが、何やら忘れ物でも思い出したのかもしれんの」
呑気にそんな事をいってるけど、どう考えてもそれは不味いことだ。あんなものがここを襲えばどうなるか……そんなことをおもってちらっと空を見ると、魔法陣が幾重にも展開されて、そこから更におかしな物が出てきた。それは半身だけの巨人。どこか、ライザップで見た人種の兵器に似てるが、それとは根本的に大きさが違う。そして二つの巨体がぶつかる。それと同時に地上にはとてつもない衝撃が走った。何度も死ぬ思いはしてきた。
けど今回はもうだめかも――そうおもった。
(せめて姫だけでも!)
私はそう思って彼女に覆いかぶさる。そして愛する人の無事を祈る。
(ラジエル……どうか無事でいて)
「ティル殿、あれは……」
「わかってます。あれは不味い物ですね」
私に警告を発してきたのはオウラム国の大隊長が一人『バッガス』さんだ。彼はカマキリ族の唯一の生き残りで旅の途中で私達と激戦を繰り広げたのちに仲間へとなってくれた古株の一人。彼はカマキリ族だけど、実をいうとその殻におさまってはいない。進化を果たした稀有な人だ。なので見た目は人に近いものになってる。筋骨隆々の体に、背中には羽があり、そして尻からは細長いカマキリの尻尾がある。腕は二本で普段は人種と変わらない形をしてるけど、戦闘になると、その腕の側面からは刃が出てくる。
その刃は刃こぼれすることはなく、いくら切っても切れ味が落ちる事もない。そして当然、切れない物はない。それに戦闘だけでなく、色々と気が利く人でもある。今は私の護衛もしててくれてる。いや、正確には私の護衛ではないけども、きっと一緒に守ってくれるだろう信頼感がある。
「どうですか姫?」
私はちょっと急くようにその方に声をかける。私の数メートル先には自身の体よりもかなり長い服を纏った九歳くらいの子がいる。その子は青い肌に髪と呼べるのかわからない、まるで貝の半分を頭に乗っけてるような感じの子だ。目鼻立ちはくっきりとしてる。まあだけど、その目とか鼻とか口に実は意味はない。だだ、私達が接しやすいようにそんな形をとってるだけ。だから瞬きもしないし、下手するとバランスがおかしくなってる時もある。
「なかなかに難儀であった。だが我にかかればこのくらい容易いのじゃ」
可愛らしい声でそういう彼女は褒めて褒めてと示してる。だから私は近づいて彼女の貝の部分を撫でてあげる。ひんやりと感触が肌に伝わってくる。
「それで道は?」
「うむ」
そういうと周囲を漂ってた優しい光が集まって同じ方向に流れてく。あれを辿れはいいのだろう。
「急ぎましょう。外に出てるとあの空の物に晒されます」
「そうじゃな。奴らめ、いよいよ本気になったのかもしれんの」
「お知り合いで?」
「昔の」
この人がいう昔はそれはもう数年とか数十年とかじゃない。それこそ、数千から万単位だ。
「絞り尽くしたと思っておったが、何やら忘れ物でも思い出したのかもしれんの」
呑気にそんな事をいってるけど、どう考えてもそれは不味いことだ。あんなものがここを襲えばどうなるか……そんなことをおもってちらっと空を見ると、魔法陣が幾重にも展開されて、そこから更におかしな物が出てきた。それは半身だけの巨人。どこか、ライザップで見た人種の兵器に似てるが、それとは根本的に大きさが違う。そして二つの巨体がぶつかる。それと同時に地上にはとてつもない衝撃が走った。何度も死ぬ思いはしてきた。
けど今回はもうだめかも――そうおもった。
(せめて姫だけでも!)
私はそう思って彼女に覆いかぶさる。そして愛する人の無事を祈る。
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