美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ60

「私がメデス?」
「そうです」
「けどさっき確か、自分達の命を捧げるとか言ったけどさ、既に私への貢ぎ物だったんじゃ駄目だよね?」
「はて? 分かってたからいらぬとおっしゃったのでは? それでは代償にならぬと」
「もっちろんだけどね!」


 くっ、この髭、既に私の性格を把握しつつある? 私の高いプライドと維持高さをついてくるとはやるじゃん。まあストレートに聞いてやっばり私がメデスらしい事が判明したからいいだろう。


「それに何も間違ってはいませんよ。我らは既に運命の輪から外れております。だから捧げるのは運命に定められた肉体のみなのです」
「ねえ……最初からそれを想定してあんた達は全員眠りについたわけ?」


 そうだとしたら結構凄いよね。だって今の魂のような状況になって世界の運命から外れたのは予定外だって言った。けど、私の……というか、メデスという存在が現れれば、彼らはその身を犠牲に贄となると言ってる。つまりは今の予想がいなことが起こりえなかったら死ぬこと前提ではなかろうか? そんなのに皆が進んで入るとか既に狂気だよ。


「まさか、我らもそこまで夢見がちではありません。本来なら目覚める事が出来たものもいた筈なのです。だが我らはこうなった。そして肉体は必要ないと判断した。ならすべてを捧げてしまってもよい……となったわけです」


 やっぱり本当は目覚める奴も入ればそうじゃない奴もいるだろうって目算だった訳だ。実際ここに居る奴らは肉体に戻れば再び目覚める事が出来るんだろう。けど、それを不要と判断してしてしまって。だから種全てをメデスへの贄とするみたいな事が出来る訳だ。既に死んでしまった奴らも目覚めない可能性に同意したうえでの事だから、生きてる? ――すくなくとも意思を示せる彼等が最後の決定権を持つと考えて良さそう。


「どうですか? その体は?」
「別段そんな特別には感じたことないけど? まあ容姿は最高に良いけどね。あと、確かに細かな所が楽だったりはするかな。太らないし、あんまりトイレとか行かなくていいし。ケアしなくても全部が完璧だしね」


 それら全ては私が絶世の美女だからだと実際思ってた。だって可愛い女の子は良い匂いがしてフワフワでメルヘンな物じゃん? 実際そうじゃいとしても、私くらいの超宇宙的美少女になると肉体さえも美少女仕様になるのかと思ってたんだけど……


「その体は我らが技術の粋を集めて作り出した最高傑作ですから。行き着く所まで行きついた我らが神の依り代を目指して作ったのです」
「そう……なんだ」


 衝撃の事実。私はどうやら作られた体に降りた神の様です。でも実際私が神なのかはとても疑問だけどね。だって神らしい力なんてなかったはずだ。最初にゼルに会ったから巨大な力を手に入れたけどさ、そうじゃなかったらただの宇宙一の美少女だった。そんな私が神とはいかに? こいつらは私の事をメデスとやらと思ってるみたいだけどさ。


「この体が作られた物……か。ん? じゃあ、もしかして私に並び立つ美少女の体か他にもあったり?」


 それは困る。宇宙一の美少女の美少女は私だけでいい。あるのなら残念だけど破壊しよ。


「確かにいくつかの試作体はありますが……ですがそれほどまでの美しさは、他の存在には出しようがないかと」
「どういう事?」
「我らは確かに神の依り代になれる器を作りました。ですがそれは器なのです。器という入れ物には性別も容姿もありはしません。ただ命の形を現すというだけの器なのです。何かが入ってそれは初めて形を成す物。そしてそれだけの神々しさに、我らが作った最上位の器の使用……それだけで神という存在の降臨を私達は確信しております」


 うむむ……こいつらの言う事になんか心当たりありまくる気がするぞ。だってこの世界に降り立つ前に、私には色んな選択肢があった。それこそ姿形様々に……それはつまりはこいつらの器がそういう物だったからだよね? これは……わたしは神だと自認していいのでは? 有頂天になってもいい? 宇宙一の美少女で更に神とか、私もう最高じゃん。これからは名刺に領主と美少女だけでなく『神』を追加することを考えようかな? 

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品