美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ54

「皆はどうなったのかな? 同じような事になってる?」


 タクシー気分を味わってる私は色々と考える。私だけがこの状態とは考えにくくないだろうか? だってあの時皆居たんだ。何人があの手から逃れられたのかさえ分からない。もしかしたらここに居てもおかしくないよね。それとも見てる物は皆違ったりするとか? そうだとしたら法則性は一体? まあもしかしたら他の人にも会うかもだし、そうじゃないかもって事で。もしも誰とも会わなくても、ここから出た時に聞けばいいだけだ。


「きっとなんとかなるよね」


 私はそう呟く。殆ど揺れ何て感じずにこの物体は進んでる。今は森の中で障害物多数なんだけどね。木々の間をひょいひょいだよ。最初はちょっとビビったけど、当たらないとわかれば恐れる必要なんてない。そう思いつつ、再び空に目をやってあることに私は気づいた。


「そういえば星がないじゃん」


 最近やけに自己主張激しい二つの星がこの空にはなかった。あの目の上のたん瘤みたいな星がないと、空が広々してみえる。元々はこの空の広さを知ってたハズなのに、なんか無性に久しぶりな気がする。これで灰色ではなかったら完璧だった。惜しい。


「お、森抜けたね」


 数十分くらいで森を抜けた。順調だね。森を抜けると道があった。ちゃんと石畳が敷かれた道だ。なんか森の入り口部分にはアーチっポイのがあったし、ちゃんと指定された場所から出たみたいだね。とりあえずここはとても広々してる。平原にば道沿いに柵が設けられてて、奥には幾頭かの家畜みたいなのがみえる。ここは牧草地帯なのかな? こんな所まであるとは……約束の地おそるべし。けど食料は大事だしね。浮かんでる島で土地には限りがあるだろうしね。


「そういえば今まで見たところはやけに自然豊かだったかも」


 確かに街もあったけどさ、街とかは結構ボロボロだったってのもあるかもしれない。それに対して自然を活用してる場所は普通に綺麗だった。自然の強さを感じるよね。


「あっ」


 そんな事を考えてると再び空にゼルが見えた。気が利く奴じゃん。流石にもうどっか飛んで行ったと思ってた。だって空飛んでるんだよ? こっちは森を蛇行しながら出てきたんだ。流石に速度が違い過ぎるでしょ。だけど何故かちゃんとゼルは姿を見せてくれてる。うむうむ、義理堅い奴だ。


「あれ? あれって……」


 なんかゼルの周りに人型の何かが居る? この距離で人型と分かるのはなかなかにデカいよ。だって普通の人間はゼルの爪くらいしかない。けどあれは少なくともそんな豆粒ではない。


「アンティカ?」


 思い当たる節ではそれしかない。そう思ってるといきなり物凄い音とマナの奔流が襲って来た。トラックにでもぶつかれたような衝撃と共に、視界が廻る回る。ようやく止まったと思ったらいきなり外にはじき出される。


「ちょっ、何を……ってなるね」


 私をここまで運んできてくれたそれはさっきまでの綺麗な姿が嘘の様にボロボロだった。内部はどうやらエアバックのような物で守られてたみたい。それはかなり優秀で私には傷一つない。まあそもそも私は傷つきようがないんだけど。この子の雄姿を称える為にもそれは言わないよ。命を張って私を守ってくれたんだらかね。


「ありがとう」


 私はそう呟いて乗り物君にお礼を言う。そしてゼルがいた方をみる。黒い煙が立ち上り、白く見える炎がここからでもわかる。さっきの衝撃でか、綺麗だった道は砕け、地面からして裂けてた。多分優雅に草食ってた家畜たちはもう……一体なにがどうなってるのか……とりあえず私は高みの見物でもできそうな場所を探して歩き出した。

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