美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Δ41

 怪我を負った奴らはキララに任せて、私はある物を見てた。それはマナだ。思ったんだよね。あの蜘蛛は私をどこに連れて行こうとしてたのかって。今の私ならそれを知ることが出来る。今の私にはマナが見えるからね。蜘蛛が倒された事で肉体を離れたマナが流れて行ってる。本来なら世界樹へと流れる筈のそのマナは、けどここではどうやら違う。マナを独自に循環させるシステムでもあるのか、蜘蛛のマナは同じ方向に飛んで行ってる。それは私を連れて行こうとした方向だ。


 向こうに何かある? 


(そう考えるのが妥当だよね)


 この廃墟で地下へと続く道を探そうと思ってたけど、マナは私を裏切らないと思うんだよね。まあここのマナは別に私を案内してる訳でもないだろうけどさ。


「むむむ、これは……ううむ……」


 そんな唸るような声を挙げてるのは蜘蛛の体にへばりついてるネジマキ博士だ。いや、そんな反応をしてるのはネジマキ博士だけではない。他の技術者たちも同じようにしてる。やっぱりここの機械に興味は尽きないんだろう。私はパッと周りを見渡すよ。どうやら大体のけが人は動けるくらいにはなってるね。流石キララ。広範囲大人数の治療もお手の物。


「博士たちはそろそろ籠に戻って。名残惜しいでしょうけど、そんな末端の物じゃない、本命を私達は見つけに来たのよ」
「うむむ……いますぐこれを分解、解析したいじゃが……」
「ダーメ」


 そんな時間はない。一応亜子を先行させてるけど、あのマナの先にも同じようにアンティカを操れる存在がいないとも限らないからね。まあそれならアンティカを先行させることなんてしない方がいいんだけど……亜子がどうしてもって聞かなかったからね。多分、さっきの戦闘での失態を気にしてるんだろうと思う。けどアレはどうにもならない事だった。もしかしたらこの蜘蛛を解析出来れば、アンティカに対策を仕込めたりするかもしれないけど……それを一・二分で出来る訳もないしね。


 アンティカが操られたのってもっと根本的な問題な気もするし。


「さあさあ、とっとと籠に乗りなさい」


 私はそういって研究者達を促す。渋々だけど、皆さん籠に戻ったし、私はグルダフに目で合図して進みだす。当然私も籠に乗るよ。結構ボロボロになったけどね。けど私専用だけあってこれが一番いい奴なんだもん。中は勿論戦闘モードからは解除してる。そしてその中には私以外にもキララとティアラとアナハが乗ってる。


「こんな調子で大丈夫なの?」


 そんな事を言ってくるのは当然キララだ。さっきの戦闘で先行きが不安になったのだろう。まあわかる。それはキララだけではない。一緒につれて来てるプリムローズの面々も同じだろう。私が戻って来たときに駆けてきたし。今は彼女達は彼女達専用の籠にいる。シシとコランが持つマイクは特別だからね。いた方がいいかなと思って連れてきた。まあそれならミラとフィリーは置いてきても良かったんだけど、私とシシとコランが行くのに自分達だけいかないなんて選択肢はなかったみたい。


 大人しく、足手まといにならないようにするって事で皆連れてきた。だからよっぽどの事がない限り籠から出る事はない。籠の中が一番安全だからね。


「なんとかなるでしょ」
「なんとかって……」


 私の返答に呆れるキララ。だって他に言いようがないし。「無理かも……」とかいってほしい訳でもないでしょ? とりあえず私達は移動中も情報の共有をしたりする。通信越しにはネジマキ博士の声とかも交えてね。そうして数十分もすれば先行してた亜子に追いついた。そこは綺麗な水と花がある場所だった。それなりに大きな湖の上に何個からの陸が浮かんでて、どういう理屈なのか、その陸から滝の様に水が落ちて虹を常に作ってた。なかなかに綺麗な場所だ。


 観光名所に出来るな……とか私はまっさきに考えたよ。

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